僕の周りは暗いことだらけだ。
…まず第一に僕の思考回路は暗い。

それは自他共に認めているからまだいい。
その代わりに浜野くんみたいな明るい人がいてくれたりするから僕の天秤は釣り合っているんだと思う。
ただ…


「ただいま…」

『………お帰り鶴ちゃん…』


家に帰った瞬間にネガティブオーラ全開な姉さんだけはどうにかならないかなぁ……。
僕も人の事は言えないんだけど。


「今日はどうしたの?」
『聞いて鶴ちゃん…!今日小テストがあったんだけどね…』
「…うん」




『回答欄…全部ズラして書いちゃったの……』




ズン、と暗い空気が玄関を重たくする。
それは…まぁテストが悲惨な点数になってることは目に見えてくる。
しかも僕より年上、3年生の姉さんにとっては小テストも貴重な点数に値するんだと思う。

でも僕はそれが人事ではない。


「大丈夫だよ姉さん………昨日僕もやったから…」
『…鶴ちゃんも……?』


そう言って半泣き状態の顔を上げた姉さんから少し生気が戻った。
こうネガティブな姉さんを見ているとやっぱり姉弟なんだと思う。
気持ちが通じる所があるのが姉弟のいい所…だと信じたい。


『そっか…鶴ちゃんもやっちゃったんだ』
「うん」

『じゃあ落ち込むことないよね!うん!姉弟だもん!』


姉弟だもんってどういうことだろう。
…まぁ気にしないでいっか。
縮こまっていた姉さんがバッと立ち上がって僕と同じフチの大きなメガネを押し上げる。

これが姉さんと僕の違うところ。

意外と姉さんはポジティブ思考だったりする。
と言うか、ネガティブとポジティブのスイッチの切り替えが激しい。

だから家族の僕であってもなかなか姉さんの扱いは難しい時がある。
さっきの暗い雰囲気はどこにいったのか。
姉さんの鼻歌を歌いながらリビングへスキップして行く背中を見ながらため息か何かわからない息が漏れた。


『鶴ちゃんっ!ご飯するよー!』


先にリビングに足を踏み入れた姉さんが廊下に顔を出して手を振る。
次に姉さんがネガティブになるのは今日やったって言うテストが帰ってきたときだろうか。

なんにせよ人がネガティブでいるのはいい気分じゃない。
(え?……僕のことは棚に上げてだよ)
姉さんにはネガティブで落ち込んでいるよりも笑ってたほうが似合う。

今日の夕飯はハンバーグだと意気揚々とはしゃぐ姉さんの待つリビングへと重たいカバンを持って向かうのだった。



裏表smile
(あぁぁぁぁぁ!!)
(ど、どうしたの姉さん)
(…ハンバーグ………焦がしちゃった……)

((……あーあ…))

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