親から受け継いだもの、と言われれば世間では何を想像するだろうか。
容姿や性格、答えは様々だと思うが"神童"の性を受け継いだこの姉と妹にはそれ以外にも受け継ぎ、酷似するものがあった。
『拓人!左サイド、エイトビートずれてますよ!』
「はいっ!」
『1、2、3……そこは中央からのバックパス、サイドを意識しつつ前へ!』
「「「はいっ!」」」
―天性の才能
神童皆のお姉さん、神童皆のお姉さんは多彩な才能に恵まれていた。
音楽、勉学、そしてスポーツ。
吹奏楽部に所属し部長として下級生を率いる皆のお姉さん。
サッカー部に所属し2年生の身でありながら上級生下級生を率いる拓人。
どちらにせよ天才的カリスマセンスを持ってして統率力を発揮している。
『うん…そろそろ休憩にしましょう!』
「よしっ、休憩!」
息をつく練習に入る休憩の声にサッカー部員全員が膝に手を付いた。
滴る汗がグラウンドに染み込んでいくのが視界に入り、同時に高抑した気分が静んでいく。
『拓人、今のうちに打合せしますよ』
「姉さん、さっきのフォーメーションだけど…」
『テンポはいいと思います。でも皆のビートがついて行ってないかもしれませんね』
「じゃあDFをもう少し前にして…」
神童拓人の必殺タクティクス"神のタクト"
それには由縁があることを部員は存じている。
まるでオーケストラの指揮者のような動き。
それによって奏でられるタクティクスというグランドのオーケストラ。
滑らかにフィールド指揮る指はまさにタクトの様で。
「キャプテンのお姉さんってすっごいリズム感あるよね…」
「練習中にあんなことまで考えてられるって…さすがって言えばさすがだけど」
「何言ってんだ。あの神のタクトは皆のお姉さんさんあっての神のタクトなんだぞ」
「わっ!霧野先輩!」
「あの神のタクトは皆のお姉さんさん発案の下生まれたんだ」
「「えぇ!?」」
ベンチの奥で話し合う天才姉弟に感服の念を押す。
普段は吹奏楽部で指揮を取っている皆のお姉さんはサッカー部の試合前になるとこうしてダメ出しに現れては去っていく。
そんな救世主的であると同時に雷門の大事な存在である。
「あの二人、サッカー界でなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「え?キャプテンは神のタクトですよね?」
「違う呼び方もあるんですか?」
「あぁ…その名も」
天才姉弟に冠する肩書き。
神童家の名に恥じぬその肩書きはまさに2人にピタリと当てはまる。
「"二重指揮者"……デュアルコンダクター」
「あの2人は世界で1番美しくフィールドを支配する」
それが神童拓人であり、神童皆のお姉さんである。
どちらかがかけてもこの指揮は完成しない。
一重ではなく二重と言う重みのある指揮はどんなにすぐれた指揮者にも真似はできないであろう。
『練習始めますよ!』
「練習始めるぞ!!」
息のあった指揮を可能にする姉弟の絆は誰にも真似はできないから。
二重指揮者
(蘭丸くん、さっき何か言ってました?)
(あぁ、神童と皆のお姉さんさんのことをちょっと)
(…?)
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