ヒーローとしてでなく、まるでアイドルのような扱いを受けているヒーロー。
―それがバーナビー・ブルックスjr.

ヒーロー業は勿論、相棒のワイルドタイガーを共に多種多忙なスケジュールをこなしている。
今日の仕事はモデル業らしくスタジオに2人して足を向けるが、なぜかあの冷静なバーナビーに落ち着きがない。
辺りをきょろきょろと見回し、ケータイをよく気にしているように見える。


「なんだぁ?どうしたのバニーちゃん。いつになく落ち着きないぜ?」
「…バーナビーです。と言うかオジサン……今日の仕事内容ちゃんと理解してるんですか?」
「仕事?仕事って…普通にモデルだろ?」
「ハァ…。やっぱりちゃんと書類読んでないんですね。今日誰と一緒に撮影するかわかってるんです?」


この仕事の3日ほど前、確かにロイズから今日の撮影についての書類を渡された記憶は確かにある。
だがそれをちゃんと読んだかと言われると否。

バーナビーはきっちりとそれを読んでその上でのこの挙動不審ぶりを発揮しているのだ。
さっきの口ぶりからこの仕事を共にするモデルに問題があるのだろう。
ワイルドタイガー…いや、虎徹は誰だ誰だと思考を巡らせる。


―ブルーローズか?
だがそれならバニーはあんな風にならないはず。

―じゃあファイアーエンブレム?
…その場合だとあっちの方が興奮して何か言ってきそうなものだ。


書類が手元にあればもう一度確認するのだが生憎書類は家のカバンの中にでもぐしゃぐしゃになっていることだろう。



『お兄様!』
「シャーリー!」

「……は?」

『もう…来てたなら言ってくれれば迎えに行ったのに』
「すいません。連絡をすっかり忘れていて…たった今メールを送ったのですが」
『え?嘘』

「え?えぇ?ちょ、待っ…えぇぇぇ!?」

「なんですかオジサン」
「だってバニーちゃんが2人ってしかも女…ってええぇえぇ!?」



スタジオで人目にもくれず叫び倒す虎徹。
それもその筈、バーナビーの隣に立っているのはバーナビーに瓜二つな美女なのだから。
虎徹の方を振り返った少女はあ!と表情を変えて虎徹に駆け寄っていく。


『もしかしなくともワイルドタイガーさんですか!?』
「あ!?あぁそうだけどよ……お嬢ちゃんは……まさか」

『はい!初めまして、シャーリー・ブルックスです』


瞬間スタジオに再び絶叫が響いた。








「うっそぉ!?バニーの妹!?こんな可愛いくて綺麗な!?」
「だから書類を読めと言ったんです!シャーリーは正真正銘血の繋がった僕の妹ですよ」
「なにそれ自分の遺伝子自慢してんのバニーちゃんてば」
「違 い ま す」

『お兄様もタイガーさんも仲がいいんですね!』

「「違う!」」



そんなこんなでこの日の撮影はグダグダしたものになったという。







バニーなお兄様

(シャーリーは人気モデルなんですよ。まさかそれすら知らなかったなんて…)
(俺が知ってるわけねーだろ!)

_

- ナノ -