モデルとして多忙なスケジュールをこなしつつ、これを欠かしては今日が終わらない!とも言うべきシャーリーの日課。


『スカイハイさん、今回は大活躍でしたね!』


兄の出演しているテレビ番組ーもといHERO TVのチェックである。
そして最近、その日課に追加された出来事があった。

それはジャスティスタワーへと自由出入りが許されてから。
各HERO達にその内容の感想を伝える、と言うものだ。


「昨日は運が良かっただけさ!それに、折紙くんが人質を救助してくれたからだよ」
「確かに、あれは折紙のファインプレーだったよなー」
『ですよねっ!』

「そ、そんな…!」


キースがイワンの肩を軽く叩き、呼応して虎徹が思いっきり背中を叩く。
バシバシと音が鳴る程の激励にイワンは苦笑いの中に痛みを訴えた。
もちろん含まれた意味に虎徹が気付く筈もなく。

一方的に痛みを与えられ続けたイワンに、シャーリーが笑顔の花を咲かせる。


『そうですよ!折紙先輩がいてこその逮捕でしたから謙遜なんか勿体ないです』
「…!」


なでなで、効果音にするならそう形容するのが正しい。
イワンの癖のあるプラチナブロンドにシャーリーが己の長い指を通し、ゆっくりと交互に梳いていく。
人はそれを頭を撫でると言うのだが、ハッキリ言ってイワンはもう頭を撫でられるような年ではないだろう。

あのシャーリーに頭を撫でられた、それ以前に人命救助以外で女性に触れるなんて、と言う色々な思考が頭を巡り気恥ずかしさからかイワンは顔を真っ赤にさせた。


「シャーリーさん…もしかして子供扱いしてません?」


なけなしのプライドで言い出したイワンの言葉にシャーリーはキョトンとする。
ついでに、キースと虎徹が続けてキョトン。


「あれ?折紙お前って…」
「そういえば、折紙くんはシャーリーくんと同じ20歳だったね!」
「じゃあ同い年なのかお前ら!いいね〜若いって…」

『あれ?そうだったんですか!同い年!』
「…そうですよ…」


相手はトップヒーローを兄とするトップモデルだ。
それなりの壁は感じていたがまさかここまでとは軽くショックすら覚えた。
自信なさ気に丸まっている背中が更に丸くなる。
心なしか負のオーラすらも同時に背負った気分になった。


「でも背って折紙のが低くね?」
「ん…?あぁ本当だ!確かにシャーリーくんの方が少し高いね!」
「うっ……」


追い撃ちをかけるように自分が気にしていたことを指摘されイワンは今すぐ逃げ出したい衝動にすら駆られる。
だがそれを聞いたシャーリーはじっとイワンを見つめ、違いますよ〜とおどけて笑って見せた。


『折紙先輩猫背気味ですし、私がブーツ履いてるからだと思いますよ?』


ほら、とブーツを脱ぎ、イワンに背中を向けピタッと自分の背中とイワンの背中を合わせる。
背中合わせになることにより猫背気味な背中がシャキリと伸びる。

その頭と頭の差にして数センチ。

虎徹がイワンの頭を、キースがシャーリーの頭を手の平で尺取り、比べてみた身長差は確実に存在していた。


『ね?』


ブーツを履き直し、イワンよりも視線が高くなったシャーリーが無邪気に笑う。
だがブーツの手助けがあってとは言え、女性との身長差が殆どないに等しいなど恥ずかしい気がしてならないと感じていた。


「それでも女にしちゃ高いな〜」
『モデルやってたらもっと高いヒールとかも履きますよ?』
「え?今のよりもですか?」
『はい』
「やはりバーナビーくんの妹だ!バーナビーくんもかなり身長が高いからね」

『でも折紙先輩の方が大きいですもん。さすがヒーローって感じです!』



よかったな折紙、と密かに囁く虎徹に、イワンは思わず顔を真っ赤にさせてトレーニングルームを駆けて行ったのだった。






せめてものプライドで

(…なんだろう…最近、バーナビーさんからの視線が痛い…)
(頑張れよ折紙)




-------

※折紙二十歳は捏造です

_


- ナノ -