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フィフスセクターであった剣城京介を兄に持ち、雷門中学に通う一人の少女。
本当は違う進学中学に通うはずだった双子の妹剣城名前は兄である京介によってその道を絶たれていた。
いつの間にか雷門に入学手続きが済まされていて家に雷文の制服が届いたときはあまりの怒りに兄直伝のデスソードをくらわせたものだ。
『兄さんの馬鹿アホフェイスペイント中2病』
絶対零度の怒りを表に表した名前に京介は成長を感じたとかそうでないとか。
兄達の影響でサッカーが好きな名前だが、通うはずでなかった雷門に通わされている以上兄と同じところにはいたくない。
それは思春期に子供が父を嫌う原理に似ている。
だが京介に泣きつかれ挙句フィフスセクターの黒木にまで頭を下げられてしまい名前は現在マネージャーをこなしていた。
『…まったく……』
ため息に合わせバインダーに挟まれた紙にシャーペンを滑らせる。
紙には行われている練習メニューと誰がどのように動いていたか、と言う事が事細かに書かれていた。
「剣城と違って名前はしっかりしてるな。ドリンク貰うぞ」
『どうぞ神童先輩。まぁ嫌々とは言えやるからには徹底的にしたいので。…それに兄と比べないでください』
「それ、剣城に言ったら泣くぞ多分」
『そんなの知ったこっちゃありません』
冷静な表情で視線はグラウンドを向き、シャーペンは常に動き続けている。
ベンチにある全員分のドリンクの中から一つを手に取り飲み始める神童。
練習では交代したのか汗を滴らせた霧野がベンチに向かってくるのが見えた。
名前は一度手を止め邪魔にならぬよう足元によけていたタオルの束をベンチに置く。
『どうぞ』
「あぁありがとう。気が利くな」
一番上にあったタオルを霧野に渡し、再びバインダーを手に取った。
名前の隣に腰掛け、吹き出す汗を拭いていく。
「お疲れ霧野」
「そっちもな。名前、さっきのMFに関するプレーなんだが…もっとサイドから行くべきか?」
『そうですね…辺りの状況によって変わりますが、さっきの状況ならあれでいいと思います』
「でもそしたらこっちのパスに対応できるか?」
『それなら…』
バインダー持ちの名前を真ん中に挟み、霧野と神童が両サイドに立って討論を開始。
サッカー上級経験者である名前の意見は時にこうして取り入れられ、結構な信頼が寄せられているのだ。
ああでもない、こうでもないと討論しているとフッと名前に影がさした。
誰だ、と思って顔を上げるとそこにはクールぶっているがかなり血相を変えた剣城兄の姿が。
「名前!だから練習中は俺意外の男と話すなって言ってるだろ男なんて皆あんなことこんなこと考えながら近づいて『じゃあ兄さんが近寄るな』
「即答!?」
『ここにいられると迷惑だからさっさとあっち行って』
「だが断『るを断る』
こうも冷たくあしらったとしてもなかなか剣城は動かない。
霧野と神童は巻き込まれるのはゴメンだと言わんばかりに完全に傍観に回ることに徹していた。
数分の議論の後、名前は最終手段に出る。
はぁ、とため息を付いて名前は精一杯の笑顔を顔に貼り付けた。
『お兄ちゃんお願い。私お兄ちゃんのカッコいいプレーが見たいなぁ』
「行ってきます!」
全力で"可愛い妹"を演じれば天馬もビックリなスピードで剣城はグランドに駆けて行った。
『まったく……毎度毎度これをしななきゃいけない私の身にもなって欲しい…』
そんな名前の両肩をサイドから2人で叩き心中を察する。
完全にキャラが定まらないこの兄妹。
ある意味似た者同士と思うのだがそれを言えばきっと顔面にデスソードが飛んでくることだろう。
「「名前も大変だな」」
2人は口を揃えてそう言った。
クールで馬鹿げた兄と妹
(すいません先輩方)
(別にいいさ)
(もう慣れてきたしな)
(はぁ…兄さんが戻ってこない内にやりましょう)
((…そうだな!))
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