※夢主猫設定
『にゃあ』
猫である私には日課がある。
土曜日の昼下がり、大きな木を伝って白く高い塀を乗り越えていく。
綺麗に揃えられた芝にトッと降りてある部屋を目指す。
「お前また来たのか」
防音だと思われる部屋に今の声は届いていない。
でもガラス戸を叩いていれえば中でピアノを弾いていたアッシュグレーの人とそれを聞いていた茶色いコルネの人とピンクの人が気づいてくれたみたい。
ピンクの人がガラリとドアを開けて私を抱き上げる。
この人たちはあったかくて気持ちいい。
ピアノの演奏をやめて私とピンクの人に近付くアッシュグレーの人と興味津々なコルネの人。
コルネの人は初めて見るなぁ。
「わぁ!先輩の猫ですか?」
「いや、休みの日にこの猫よく来るんだよ」
「神童懐かれてるんじゃないのか?」
「それを言うなら毎回霧野がいる時に来るだろ」
「…それもそうか」
『にゃっ』
ゆらゆらと目の前で揺れるピンクの髪の毛に反射的にパシッと前足を伸ばす。
「わっ、こら!」
爪に人房の髪が引っかかったと思ったら慌てて引き離された。
あぁ、もう少し遊びたかったぁ…!
『にぃー……』
「もう少しやりたかったらしいぞ」
「茶化すな神童」
「霧野先輩の髪の毛揺れますもんね…」
「いや松風の髪も遊ばれそうな髪だろ…!」
わ、アッシュグレーの人猫の言葉がわかるのかな…!
今度はアッシュグレーの人の腕に移る私。
この人の手は人一倍気持ちがいい。
ピンクの人の手も気持ちいいけど抱かれるならピンクの人。撫でられるのはアッシュグレーの人がいい。
コルネの人はなかなか猫に触ることがないのかちょっと手が荒々しかった。
「なんか俺嫌われました…?」
「松風…コイツは犬じゃないぞ。もっと優しく撫でてやれ」
「こ、こうですか?」
おそるおそる、私に手を伸ばすコルネの人。
今度はさっきよりか優しい手つきで撫でてくれた。
気持ちよくて思わず喉が鳴り、目を細める。
「お?…眠いのか?」
『にゃ』
暖かい腕の中、ちょっと私の意識はまどろむ。
『にゃー』
するりと腕を抜け出してピアノの椅子に飛び乗った。
この前ピアノに乗ったら怒られたから、今回はちゃんと椅子に降りたの。
そしたらプッて笑われた。(なんでだろう?)
「そこは俺の座る席だぞ」
「お前は俺達とあっちな。松風」
「はい!」
『にっ』
ピンクの人に抱かれて今度は近くのソファーに移動させられた。
私はピンクの人の膝の上。
隣にはコルネの人。
アッシュグレーの人はさっきまで私が乗っていたピアノ前の椅子に座る。
そしてピアノの音が部屋に響き出した。
激しくなくて穏やかな音。
うん…なんでこんな落ち着くんだろ…。
ピク、と耳を傾けてみると音が流れ込んでくる。
「寝るのか?」
『にゃー』
言ったのをを最後に私はゆっくり眠りに落ちていく。
ずっと撫で続けられていた手の熱と、感じる音。
これが私の日常。
猫の穏やかな一日
(…ホント、猫なのによく懐くな)
(最初ピアノに乗ったコイツ慌てて抱こうとしてひっかかれたの誰だっけ)
(へぇ…そんなことあったんですか)
(き、霧野!)
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