ずっと周りに笑顔を振りまく浜野が好き。
確かにそうだけど、そうなんだけど…。


「どったの名前?なんか今日元気なくない?」
『…なんでもない』


そ?と言って人の輪に紛れていく浜野を速水くんみたいに机に突っ伏したままの状態で目で追いかける。
浜野がいる人の輪はいっつも笑顔に包まれている。
それを見ているのは妙に微笑ましいモノがあった。

男子も女子も関係なしに笑いを起こすことができるのは浜野の才能の1つだと思う。

でも本人は無自覚なのだからある意味末恐ろしい。
彼がその武器に気付いた時彼はどうなるだろう。
…まぁ気付かないままの方が浜野らしいけどね。
と言うかそれに気付いてしまっては浜野らしさがなくなりそう。


あのひだまりの様な浜野を誰かが独占することは許されない。
私は心の底でなんとなくそんな意識に囚われていた。



「行かなかくていいのか?」

『……浜野にはね、近付き過ぎると眩しいの』



私の思いを知っている倉間に投げかけられた声にボソリと返す。
そう。浜野は眩しい。
あえて言葉にするというのなら、浜野と言う太陽に近付き過ぎて火傷してしまう、そんな感じ。



『皆に囲まれてる浜野が好きだから』



笑顔に囲まれて、その中心に浜野がいる。
遠巻きに見ているのは寂しいと思うことはあっても苦だと思うことはなかった。


「馬鹿だな」
『うん。馬鹿でいいよ』


突然倉間にどつかれた頭。
女である私に向けてある筈なのに手加減なしで大分痛いそれを身に受けて悶絶していたら不意に浜野がこっちを向いた。

あれ、こっちに向かってきてる…?


「倉間!何してんだよー」
「いや、こいつが馬鹿なこと言ったからちょっと」
「いやいやめっちゃ殴ってたし!苗字、頭冷やしに行こうぜ!」

『え?は?』


あ、ごめん間抜けな声出たけど他意はない。

あれよあれよと言う間になぜか私は浜野に腕をひかれながら廊下を歩いていた。
倉間がなんか一仕事終えたぜみたいな顔でこっちを見てたのだけ妙に頭に焼き付いた。腹立つ。


『倉間め…』
「大丈夫か?」
『まぁ…大丈夫だと思うけど』

「でもなんかコブになってるっぽいけど?」


浜野との距離が縮まって、私の後頭部に浜野の小麦色に焼けた手が添えられる。
急な行動に頭じゃなくて顔の方に熱が集まってきそうだった。
純粋な疑問符を浮かべながら聞いてくる浜野に申し訳なさが募る。


「あれ?顔まで赤くない?」
『きっ気のせい!浜野の気のせい!』
「…そう?」
『そう!』


水道で濡らしたハンカチを頭に当てる。
でもそれよりか顔の方が熱を持っている気がした。
早く引いて欲しいと思うのにその熱はなかなか引かなくて。

あぁもうと思ってた時パチン、と軽快な音。


「こうしたら、冷えるんじゃね?」


それと共に両頬に感じたのは冷たさ。
浜野が自分の手を濡らして私の頬をサンドしていた。
ニカッと屈託の無い浜野の笑顔が広がる。

やっぱり私って浜野が好きなんだなって思っちゃった。
皆に愛されてる浜野も、こうして目の前の私だけに笑いかけてくれる浜野も。
皆の周りで笑っていても、それでもいい。


「名前?」


既に若干浜野の体温で水が温まってしまったのか、少し生ぬるい手。
そっと手を添えて浜野の体温を感じる。

今だけでいいから、この暖かさは私だけのものでいて欲しい。







日だまりの様な体温を

(感じれるのはこんな時しかないから)


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