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雷文中一行は現在合宿に来ていた。
厳しい練習は勿論であったがそれを乗り超えた先にあるのは癒やし。
合宿所には露天風呂がありそこで疲れを癒やし次の日の練習に備える……。

だがその前に思春期成長期の男子たちにはそれよりも大事なことがある。


「お腹減ったー!!」
「メシーっ!」


そう、夕飯。
いくら昼食を食べているからといってエネルギーは減っていくものだ。

温泉の情緒を味わうよりも料理を味わいたいと思うのが当然というもの。


『嘘っもうそんな時間なの?』
「メシならこれから準備だぞ?」


無情な言葉にピシッと一同が固まった。


「う、嘘だろ…?」

「皆がお風呂入ってる間につくる…予定だった」
『だから今から買い出しだよ?』


計画的にいえばこれから部員たちが入浴している間にマネージャーが買い出しに行き夕飯をつくる、と言う手順だった。
だが予想外の全員の空腹さに絶句。
それでも予定は変えられない。


「先輩方予想以上の疲労ですね…」

『買い出しに誰か付いてきて貰おうかと思ったけど…私たちで行こっか葵ちゃん』
「でも、名前さんの方の買い出し1人で大丈夫ですか?」
『んー…まぁ、どうにかなるんじゃないかな』

「「「「「!!!」」」」」


名前の言葉は暗について行けば名前と共に買い物に行けることを示している。

―そんなチャンスを逃してたまるか

練習で流した汗が一気に引いて全員がバッと顔を上げた。
その瞳にはまるで試合の時のような火が灯っている。


「名前、それなら俺がついて行こう」


あくまでも爽やかそうに第一に先陣を切って切り出したのは神童。
その背後には黒い欲望が渦巻いているのだが彼女は全く気付いていない。
部員たちには丸見えな欲望を全力で叩き潰しにかかる。


「いや神童。お前は今日指示出すのに疲れてるだろう。俺が…」
「先輩はお風呂に入ってゆっくりしててください!」
「ここは僕たちが……」
「1年がでしゃばるな!」
「ここは3年に譲るべきじゃねぇの?」
「後輩にやらせたとあっては示しがつかんだろう」

『え?え?先輩たちまで…』


急に始まった激闘に名前は困惑する。
まさか自分の一言でここまで事が発展するとは思ってもみなかった。
それに対し名前を除いた女子マネは慣れた手つきで全員いそいそと買出しの準備を始めている。

『ど、どうしよう水鳥ちゃん…』
「あたしらはいいから誰か決めとけよ」
『へぇっ!?』

一応マネージャーではない水鳥も買出しは手伝ってくれるらしく準備には水鳥も加わっていた。


「「「「で、どうするんだ名前!?!?」」」」


ズイっと名前に詰め寄ろる一同。
どうしよう、と一歩後ずさった時。自分の背中に暖かい感触がして名前は振り返った。


「あれ?名前どしたの?」
『は、浜野くん!』


御手洗で席を外していた浜野が帰ってきたのだ。
今までの経緯をそれとなく説明し目の前に立っている物凄い血相の部員を見てじゃあ、と浜野が笑う。



「間を取って俺が行けばいいんじゃね?」

「「「は」」」
『え』


「な!名前!行こうぜっ!」
『浜野くんっ!?』



浜野の眩しい笑顔とあっという間に去っていったその行動力について行ける者はいなかった。
勢いで連れて行かれた買い出し。

後に宿舎では唖然としている部員が見られたとか。






無欲の勝利

(名前どうかした?)
(…まぁ、……いっか)

(ん?)


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