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"今度のデート楽しみにしてます!"


現在サッカー部の部室には暗躍した空気が漂っていた。

その原因は一枚の紙。
ピンク色のペンで丸っこい文字で書かれた上記の内容は部員全員に静かな怒りを持たせるには十分な破壊力を秘めている。
名前は書いてなくとも分かる。
この手紙は明らかに名前の文字であると。



「さぁ皆…今日の議論は言わなくとも分かるな」

「「「「イエッサー」」」」



なんだこの集団と突っ込んだら負けである。

神童を筆頭に部室の机を囲み、中心には手紙。
ピンク色の可愛いメモ帳に書かれた手紙は黒く重いこの空間には似合わない。



「まず…この手紙に見覚えがある者。正直に手を上げろ」



シーン、

無音が部屋を包み、たとえこの場に当事者がいたとしても手を挙げられる空気てはないと思われる。
神童の目は本気と書いてマジと読めるようなほど鋭い。
むしろ視線で人が殺せそうな勢いだ。

当たりを前ではあるが手を挙げる馬鹿はいない。
正直言うと誰も白状をするとは思っていなかったがそうなるとこの話し合いに意味はなくなる。
手を挙げればまず袋叩きにされるであろう名前と付き合っていることを裏付ける手紙。


「…挙手はなし…か」
「まぁ出たら出たでフルボッコだろ」

「ちょ、南沢さんそれ言ったら更に挙手なんて出ませんって」


やはりか、と思ったが口には出さずただ挙手者が出るのを待つ。
重い空気のまま沈黙が続き、ダンッと神童が机を叩いた。


「このままでは埒があかない…こうなったら俺の家で指紋検証をするしか…」
「そ、そこまでするんですか…?」

「名前に渾名す輩は俺が潰す…!」
「…それただの妬みだろ」
「そこ、何か言ったか」

「「いや何も」」


一枚の手紙でここまで問題になるとは、とも思うのだが部員たちには大問題なのだ。



『天馬くーん!葵ちゃんが呼んでたよ……あ、取り込み中?』

「「「「「名前!!!」」」」」
『はい?』


不意に部室のドアが開き、そこに立っていたのは葵から伝言を頼まれたのであろう名前だった。
まさか自分が現在この話の中心にいるとは思っていなかっただろうが当事者突然の来訪に全員が声を上げる。
自分がやってきたことによりなぜそんなに歓喜の声を上げるのかがわからなかったがとりあえず返事をする。


「この手紙!これ誰に書いたんだ!」


血相を変えて手紙を名前に突きつける神童。
あ、と声を上げて手紙を受け取る名前。
その表情は正反対であり手紙を持っている気持ちも正反対だった。


『私の手紙?』

「誰宛の手紙なんだよ?」
「部室に落ちてたんだけど……」


確実に部員の内の誰かに渡されたであろう手紙は今書いた張本人の手に渡った。



『蘭丸先輩。気を付けてって言ったじゃないですか』

「悪い名前。あの雰囲気だったからなかなか言えなくて」
『もー…』



「「「「……霧野おぉぉぉおぉぉ!!??」」」」



ニヤリ、霧野が笑って名前から手紙を受け取りに行く。
この場に名前がいる時点で霧野がフルボッコにされることはなくなる。
名前の公認でオープンになってしまったということは既に霧野に手が出せなくなってしまったということ。


「ということで、俺たち付き合ってるからな」


これを見越して行動。可愛い顔して霧野は策士だった。




可愛い顔して

(えげつない策士)
(それが霧野蘭丸と言う男だった)


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