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とある日の昇る昼休み。
苗字名前は中庭でのんびりとした一時を過ごしていた。
過ごしていた、と言うか現在進行形でそのひとときは続いている。
青々と繁る芝に寝転がり、小さな寝息を立てて午後の授業に備えてのしばしの休息。
昼休みになると外に飛び出していく様子はもう日課であり、時にサッカー部員がそれを追いかけることも軽い日課になっている。
「お前ら………やっぱり今日もいたか…」
「霧野。遅かったな」
「もう名前は夢の中っぽいけどね〜」
茂みをかき分けていつもの場所にやってくればそこには見知った先客が数名。
神童がじっと愛おしそうに名前の寝顔を見つめている。
その表情にいつもの難しげな所は一切含まれていない。
寝ている名前の頬をぷにぷにとつついている浜野を見て思わずため息が漏れる。
だがため息を漏らしたのは霧野だけでなく、浜野に同行していた速水も同じくため息をついていたようだ。
「"今日こそは名前とお昼寝するー"とか言っておいてこの始末ですか…」
「だって名前来るのはえーんだもん」
「名前のクラスはいつも終わるのが早いからな」
「付き合わされる僕の身にもなってください」
「ワリ!」
そうは言うものの浜野に悪気は一切感じられないし速水も満更でもなさそうだった。
中心ですやすやと眠る名前を起こさぬよう会話は小声のまま続けられた。
「にしても…いつも気持ちよさそうに寝てますよね…」
「…隣で寝てやろうか」
「やめろ神童」
今にも隣に寝転がり出しそうな神童を止めるが若干その思考に便乗したくなった自分が頭の中にいた事に霧野は妙な罪悪感を覚える。
頭を左右に振り邪念を飛ばせば今度は浜野が名前との距離を詰めていた。
じーっと名前を見つめてからえい、とその頬を再びつつく。
「っちゅーか…名前って無防備だよなー…」
激しく同意をしたいがこの大勢いる状態で誰かが手を出そうものなら誰かが止めるだろう。
まぁそこまで計算して名前がこうやって寝ているとも思えないが。
きっとこの状況で起きたとしてもおそらく『あれ?皆なんでここにいるの?』ぐらいで済まされる。
それがまた浜野の言う無防備な訳だが幸いが転じている名前のこれは才能の一種とも言えよう。
「どうせなら皆で昼寝しねぇ?」
「「「は」」」
「いや、だからー」
"2年生神童くん、浜野くん、速水くんは至急職員室へ来てください"
突如無機質に響いた放送員に全員が意識を傾ける。
耳に飛び込んできた名前に思わず2秒ほど前の発言など飛んでいってしまった。
「げ、タイミング悪っ」
「…浜野くんがこの前のプリント出してなかったからじゃないんですか?」
「しまった、俺も忘れてて出してなかった気が…」
「とりあえずお前たちさっさと行ってこいよ。怒らせると厄介だぞ」
霧野が言えばそうだったと言わんばかりに駆け出していく3人。
この騒ぎでも名前はピクリとも動いていない。
ある意味神経の図太さは一人前だ。
去っていく3人の背中を見てふっと息を付き、後ろ手に隠していたブランケットを取り出す。
少し肌寒くなってきたこの時期、
さすがにこのままではダメだろうと密かに持ってきていたのだ。
起こさないようゆっくりとそれを名前に掛ける。
『ん、…?霧野くん?』
「あー悪い、起こしたか」
『んーん。大丈夫……』
すると先程の会話で脳内は起きかけていたのかあっさりと名前は起き上がった。
そして自分に今まさにかけられようとしていたブランケットを見て声を上げる。
『これ、霧野くんが?』
「あぁ。そろそろ外も寒いだろ」
『…でもそれだと霧野くんも寒いでしょ。えい』
すると名前は自分にブランケットをかけるためにと傍にいた霧野の膝、そして自分の膝にもかかるようブランケットを広げる。
『これでよし!』
満足げに笑い、もう一度眠りに就こうとする名前の隣で昼休み中霧野はドキマギすることとなった。
共有する温度
(…だからこういうのが無防備だって言うのに)
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