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部活ない休みの日。
特に用事もなく、葵たちとまっすぐ家に向かおうとしたのだが名前は休日に家で纏めようと思っていたデータを部室に忘れてきてしまった事に気付いた。
すぐに取ってこようと思えば行けるのだが待たせてしまうのも悪いから、と先に帰ってもらうことに。


『どこだったかなぁ……』


1人でサッカー棟にやってくれば自動で開く部室のドア。
勿論好き好んで部活がない日にここにくることはないだろう。
誰も居ない部室で自分の置いたデータの入ったUSBを探す。
万が一無くしてしまったとなれば結構な一大事だ。
机の上や自分のロッカーを見やるがそれは見当たらない。


「あ?名前?」

『あれ?篤志先輩?』


数分ほど模索を続けていたら急に開いたドアに振り返ればそこには名前に同じく少し目を丸くした南沢がいた。


『どうしたんです?今日部活ないですよね?』
「俺はただ参考書入った鞄こっちに忘れたから取りに来ただけなんだけど。名前は?神童もいねぇみたいだし…」

『お兄ちゃんは委員会ですよー。私はここにUSB忘れちゃったみたいなんですけど…見当たらなくて』
「USB?もしかして青いやつ?」
『はい』


己のロッカーから小さめの鞄を取り出した南沢は名前の話を聞いて閉じたロッカーをもう一度開ける。
その様子を見守っていればあった、と南沢。

「これか?」
『あ!それですっ!』
「昨日机の上に置きっぱだったから取っといた」
『ありがとうございます篤志先輩!』


パッとそれを受けとり安心感からか自然と笑が漏れる。
そんな名前を見て思わず南沢の口端も上がった。


「名前、一緒に帰るか?」

『先輩いいんですか?』
「あぁ。1人で帰らせたら神童も煩いだろうし」


そんなのはただの建前。
単に名前と帰りたいがための言い訳に過ぎないのだが純粋な名前は気付いていないようだ。
名前の前で兄の名前を出せば揺れるのは目に見えている。

案の定じゃあお願いします、と了承を得た南沢は密かにガッツポーズをかました。









『篤志先輩と帰るのは初めてですね』

「…俺らが一緒だと神童が煩いからな」
『え?』

「いや、なんでもない」



いつもは部活帰りで遅めの帰宅な為人の通りは少ないのだが今日はまだ早い時間。
人通りの多い道を2人並んで歩く。
目を光らせている兄の拓人もおらず、今日は誰の邪魔もはいらないだろう。


『何かいいことあったんですか?』
「は?」

『なんだか篤志先輩嬉しそうなんで』


恋愛座他には鈍感なくせに人の反応に対しては敏感らしい。




「!名前っ!」

『きゃっ…!』





思いっきり名前の腕を引き自分のもとに引き寄せれば大きな音を立てて名前の目の前ギリギリを大型のバイクが駆け抜けていった。


「名前、大丈夫か?」
『は、はい…』

「ったく随分と思い切った信号無視なこっ「名前ーーーーーー!!!!!!」

「げ」
『お兄ちゃん!』


そしていつものパターンと言わんばかりに叫び声と粉塵を巻き上げて走ってくる兄……神童拓人の姿。
鬼のような形相で2人に近付きバリッと音が付きそうな勢いで2人を引き剥がす。


「南沢さん…俺がいないからってそんなことさせませんよ」
「いやお前来たじゃん」

『お兄ちゃん委員会は?』
「そんなもの俺が終わらせてきた」
「どういうことだ」

「そんなことより名前南沢さんに何かされてないか大丈夫なのかぁぁあぁぁ!?」

『え?え?ふぇぇ?』

「オイ神童名前を振り回すな!」


名前の両肩を掴んで前後に揺さぶれば物凄い勢いで目が回っていく。
慌てて今度は南沢が引きはがしにかかるが拓人は完全に目の前が見えていない。

結局軽く気が飛んでしまった名前を拓人がおぶって家に帰ることになった。
今度は委員会でなく拓人が簡単に抜け出せないような時に名前を誘おうと南沢は密かに思っていた。





Swing around!!!
(振り回せ!!)

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