小さくなっても大きくなっても、彼女の中身は同じ"アリス"なわけで。
少しは大人になった思考回路。
しかし好奇心は大きくなっても旺盛なようだ。

何のことも無く船内を歩いているキャスケットの後ろにばれないように近付く。
幼い時にはもうやるなよと言われたがやるなと言われるとやりたくなってしまう悪戯心が働いた。
アリスの存在に気付くことなく前を歩くキャスケット。

そしてアリスは、攻撃を仕掛ける。



『……えいっ!』

「う、ぉっ!?」


―あれ、なんだこの既視感。


キャスケットがそう思うよりも先に自分の体はアリスの折り曲げられた膝によりバランスを崩した。
前回と違うのは、アリスがキャスケットの膝裏に物理的アタックをかましたのではなく、自身の足で膝かっくんをしたということぐらいか。

流石に2度目となるとキャスケットも自身に何が起こったのかはすぐに分かった。

問題なのは今度はアリスが片手で自分の下から引きずり出すことができない状況だと言う事。
いくらまだアリスが自分より小さいからと言ってその身長はキャスケットの肩ぐらいまではある。
だが、逆に言えば同じぐらいの身長だとこのまま後ろに倒れても大丈夫なのではないかと思ってしまうのも事実であった。


ふに

「!!!」
『きゃあ!』


バターン


それは一瞬の少しの油断だった。
子供にはないその柔らかさと膨らみ。

全意識がそこに集中した時、キャスケットの防衛本能が吹き飛んでしまった。
多分それさえなければアリスの上にそのまま倒れるなんてことなんかはなかっただろう。
しかしそれをさせなかったのは彼の中にある男の煩悩のせいで。


『いたたた…キャスだいじょぶ?』
「あ、あぁ…わりぃアリス。怪我ないか?」
『うん』


今までにないぐらいに素早い動きをしたのではないだろうか。アリスの上から退いたキャスケット。
お尻を地面に打ち付けたのかアリスはお尻を摩っていたがパッと見て大きな怪我はなさそうだ。

それよりも問題なことは、背中に受けた感触が頭から消えてくれないことだ。


「だからやるなって言っただろ」
『ごめんね?もうやらないから』
「…よし」
『キャス?』
「いいか、もう絶対にやるんじゃないぞ…」

『わ、わかったけど…キャス?』
「…すまん!」


それだけ言い残してキャスケットはアリスの前から姿を消した。
そのあまりの剣幕にきょとんとしたアリスだったが、刹那彼のあまりの慌て様にまた疑問符を浮かべとりあえずベポの所にでも行こうかと思うのだった。




大人になっても膝かっくん

(ねぇベポ―なんでキャス行っちゃったんだと思う?)
(……アリス、それ本人には絶対聞かないであげてね)
(?)