はぁ、と自分の息を吹きかける寒い午後。 まだ次の島には着かないのかとエースが航海士にごねたのは午前の話だ。 「早く着かねェかなー」 『きっとあと数日もしないうちに着きますよ』 む、と頬を膨らませるエースの姿はその顔のそばかすも相まって幼く見える。 きっとすぐにでも地に足をつけて走り回りたいのだろう。 そんな姿を想像したエルに思わず浮かぶ笑み。 エルは冷えた指先を温めようと海を見つめながら息を吐き出した。 「なんだ?寒いか?」 『だいぶ。コートとマフラーは前の冬島で買ったんですけど…手袋だけ買い忘れちゃって』 「誰かに借りればいいんじゃねーの?」 『そしたら代わりに誰かが寒くなっちゃうじゃないですか』 右手と左手を擦って摩擦で温めようとするも感覚が寒さに奪われた手にはあまり温かみを感じない。 "火"というものになれる自然系の能力者エースにはそんなもの必要ないというのが羨ましく感じる。 いまだ上半身裸のエースの感覚はどうなっているのだろうか。 感じてみたいような感じたくないような複雑な感覚がエルの頭に過る。 しかし雪こそ振っていないものの極寒の寒さに震えないで済むのはやはり羨ましくて。 「エル。手、貸してみ?」 『え?』 貸して、といわれたもののエースは返事を聞く前に顔前で合わせていたエルの手を取ってぎゅっとその手を握った。 「ほら、これでいいだろ!」 寒さも暑さも関係のない暖かい笑顔がエルに降り注ぐ。 エースの能力など関係なく、伝わる熱がエルの体を内側から熱くしていった。 「お?温かくなってきたな」 『あ、あの…』 「ん?あ、こっちの手もか?」 『へっ…?』 いつでも返事を聞かないのがエースのデフォルトでもある。 直後ぱしっと掴まれた先程と反対の手に熱が籠った。 「よっしゃ、次の島着くまで俺がエルの手袋代わりだ!」 彼の屈託のない笑顔程暖かいものがあっただろうか。 しかしエースの笑顔に灯される熱に嘘は付けず、赤い顔を俯かせて恥ずかしながらもエルはお願いします、と包み込まれた手に力を込めるのだった。 ------- リア充爆発させたい ということで友人Mからもらったお話でした← |