「アリスー」 「アーリースー!」 「アリス―!」 なぜか船の中で姿の見えない我が船の天使。 どこへ行った、船員が総出で声を上げて探す中ローは優雅にコーヒーを啜っていた。 今は冬島の海域に入っており、確かまだアリスには上着を渡していなかった筈だ。 いくら船の中とは言え冬島の海域を舐めてはいけない。 あっちにはいたか、いやいない、と船のあらゆる場所で会話が飛び交う。 「船長!なんでそんなに余裕なんですか!」 「あ?騒ぐ必要がねぇからだ」 黒いロングコート、更にふわふわ感の増したように感じる帽子。 しかし有無を言わせない強い眼光とくっきり縁どられた隈は相も変わらない。 「騒ぐ必要がないって…!」 『あれ、べぽにきゃすにぺんぎんだー』 「「「………は?」」」 探していた天の一声は、まさかのローの足元から。 どういうことだと視線を下に落とせばもそもそと動くロングコートの裾。 まさか、と思ったが予想通り、そこには黒いコートの下からひょっこりと顔を出すアリスがいた。 「あっ、アリスぅうぅう!!」 『どうしたのーきゃす?』 「だから言ったろ。騒ぐ必要ねぇって」 「…しかし一声ぐらいかけてくれれば」 「その方がお前らが面白くてつい、な」 「しっかしなんであんなトコに」 『きゃぷてんのしたあったかいから』 「……まぁ…そりゃ俺らツナギだしな」 確かにツナギならもぐる所もないだろう。 しかしローの着ているロングコートとなればアリスには好奇心の矛先にもなる。 冬島が近付くとベポかローに引っ付きたがるのはこのせいかと納得したクルー一同はこの時ばかりは揃いのツナギを少し恨めしく思うのだった。 コートの下からこんにちは! (しかしキャプテンの足からアリスが生えるって結構なホラー要素だよな) (あぁ…さすがに驚いた) 強面のローさんのコートの下から天使 ロングコートに顔突っ込みたいって言う天音の願望を彼女に叶えてもらいました← |