ここまでテンプレというかなんというか。
予想はしていたが声をかければここまで船員たちはお祭り騒ぎになるものなのかと、そのお祭りに加担したキャスケットは思った。


「なんでこんなに色々買ってんだよ…」
「買ってこいと言ったのが船長だったからしょうがない」
「それにみんななんだかんだでアリスに甘いしね」

『わーい!』


皆が集まる食堂のテーブルの上には山積みにもされた服やら髪飾りやら。
この全てはアリスへのプレゼントと言う事になる。
先日、髪を括るヘアゴムでも何でも次の島で買ってきたいと言ったキャスケットの願望は船長のローによって叶えられた。
ただし船員全員に声をかけるという形で。


―「お前らアリスのモンで必要そうなモン買え。金は出す」


ここまでくれば鶴の一声に近い。
可愛い可愛いこの船の天使を可愛がりたくて仕方がないいい歳した野郎たちはまるでお祭り騒ぎ。
街に降りたほぼ全員と言わんばかりの船員が現在机に広がるこれを買ってきたのである。


『すごーい!いっぱい!』

「…これぜってーアリス使わないやつあるだろ」
「誰だこんなものを買ってきたやつは…」
「捨てとく?」
「あぁ」


きゃーとまるで宝物でも見つけたかのようにその山に駆けていくアリスを見て口元はにやけるが、如何せん山の中身は変なものすら見える。
怪しいものは早急に処理をベポに任せ、キャスケットとペンギンはアリスの両端に腰を下ろした。

ちなみにベポが捨てに行ったのはなんだったのか、それはご想像にお任せしよう。


「明日からはこれでおしゃれできるな」
『うん!』
「…これだけあると選ぶのにも一苦労だ」
『あのねーあしたはこれ!』


そんなアリスは既に初手を決めているらしい。
女は選ぶのに時間をかけるイメージもあったが、子供には目に留まって気に入ったものを使いたがるのだろうか。
お眼鏡に適った最初のおしゃれアイテムとは。

個人的に最初に手に取るのは服だろうと思っていた2人。
しかしアリスが手に取ったのはもっと小さく手に収まってしまうような。


「…カチューシャ?」
『うん』

「あ、それ俺が選んだやつ」

『きゃすが?』
「…そうだったのか」
『わーい!ありがときゃすー!』


黒いリボンのようなカチューシャ。
本当に絵本の"アリス"を思い出すようなそれを見かけた時には買わずにはいられなかった。
こうして彼女の手に渡ってみると本当に絵になる光景で、キャスケットはやはり買ってきてよかったと実感する。

意気揚々としてカチューシャを手に取り頭にリボンを揺らす姿が愛おしくて仕方がない。


「「(あぁやっぱり可愛いなぁ…)」」


こうしてハートの海賊団の食堂の一角に癒しの空間が生まれるのだった。





(おいペンギンそのカメラ現像な)
(キャスケット鼻の下)
(うっせぇ)

(んー??)