キャスケット、と名前に違わぬトレードマーク。
外したところを見たことが無いとアリスはキャスケットに催促をしたことがあったが「それはトップシークレットだ」とはぐらかされた数時間前の話。
しかし隠されるとみたいと思うのは子供心と言うものだろう。
ローの帽子、ペンギンの帽子、キャスケットの帽子。
帽子だけだとこの海賊団にどれだけトップシークレットがあるのかとため息をつきたくなるほどだ。

なのでアリスは、あえてその標的を一歩ずれた所へと変更した。


『すきありー!』
「うおっ!?」


キャスケット帽に手を伸ばした、と見せかけたアリスの手が奪い取ったのは彼の瞳を隠す黒いサングラス。
半ば弾かれるように飛んでいたサングラスが床に落ちる音が響き、蔓の部分が変に目を掠ったのか当の本人は片目を抑えている。


「ってー…ったくコラ!いきなりそういうことをするな」

『……』

「アリス?」
『…きゃすってば、きれいな目してるんだね』


じっ…と初めて黒くて薄いガラスに隔たれずに交わった視線はとても新鮮なもので。
キャスケットはキャスケットでクリアになった視界に映る我らがアリスの姿はまさに天使。
しかし純粋すぎる故にその視線に貫かれるのはどうにも慣れない。

お世辞にも綺麗とは言えない海賊船の上に身を置く自分が、真っ白な彼女にどう映っているのかは彼女にしかわからないのだから。


「…綺麗か?」
『うん!』

「………そっか…俺が綺麗、か」

『?きゃすー?』
「なーんでもねェ」


落ちたサングラスを拾い、笑いながらそれを定位置へと導く。
また見えなくなった表情の1部。

隠された瞳の下で彼が思うことを、まだ幼いアリスが知る術はなかった。





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キャスくんグラサン取ったら絶対イケメンですよね。33とか許さない