麦わらのルフィ率いる麦わらの一味。
スモーカー率いる海軍G-5支部。
そして一人異質の色を放つ王下七武海、トラファルガー・ロー。

シーザー・クラウンが作った毒ガス兵器"シノクニ"から逃げ延びたこの三つ巴は今、謎の共闘を始めんとしている。

島中に充満しようとしていたシノクニから逃げ延び、研究所の厚いドアを斬り破って現れた麦わらの一味の登場に驚かない者などいなかった。
ただ、笑いながらそれを見ていたのは麦わらの一味であるルフィとロビンだけぐらいのもので。
ポーカーフェイスを気取った何人もの人物であれ少なからず驚きの片鱗は見せていただろう。

だが、厚い扉が斬られ外界とを隔てるものがなくなったというのは紛れもない事実。
このままでは研究所に逃げた意味がない。
迫る毒ガスにG-5は結託しものの短時間でなんとか扉の補強をして見せた。
流石、人間命が関わると何でもできるものである。


『…凄いですね海軍の人達』


上に伸びる通路からそれを見下ろしていたユリエもまた、その驚いたうちの1人。
隣のローはどう思っているのか、張り付いた仏頂面からの予想はなかなかできない。

ひと仕事終えたと言わんばかりにぜぇぜぇ息を付いている海軍を見つめ、これを指揮するスモーカーに目をやってみるが彼もなんら驚いた表情なんかは見せなかった。


「それよりも、あんなもんでガスが入り込まれても困る。ユリエ、燃やせるか」
『できますけど……もうあんまり"あの人"の血は残ってませんよ?』
「構わねェ。むしろ残らず使い切ってやれ。俺が後でやる」

『…ローさん相手だと恥ずかしいんですけど…』


言葉と共にユリエは"ROOM"と右手を付き出す。
何を、と周りが思った時には既にそこに彼女の姿はなく、彼女がいた跡には先程まで下で荒い息を上げていた男が1人。

そして代わりにユリエの姿は荒く補強された大きな扉の前にあった。


「え!?なに、何が起こったの!?」
「どどどどーゆーことだ!?なんであそこにいた女がここにィィ!??」

『ごめんなさい、別に驚かそうって訳じゃないんで気にしないでください』

「「いや気にするってェ!」」
『…?』


全力で突っ込みを入れるナミとウソップに面白いなぁと感想を抱いた直後、ナミの容姿と言動の不一致にあれ、とユリエが声を上げる。


『もしかして入れ替わってます?』

「あ、そうだったトラ男!さっさと戻しなさいよ!」
「いや待て戻さなくていい!いい!」
「何言ってんのよ!」


傍にいたサンジが元に戻ることを拒否していたがこれは戻さなければ収集は付かないだろう。

しかしローは聞く耳を持つこともないらしい。
見かねたユリエはローさん、と小さいながらも声を張り上げてローへと声を上げた。


『私が戻しといていいですか?』
「…好きにしろ」

『はい』

「え…!?」
「は…!?」


そう言ってくれると思いましたと笑った直後、ユリエは2人が入るだけのサークルを展開した。



『"シャンブルズ"』



ドクン、と入れ替わっていた筈の体が跳ねる。
現状の理解もままならぬまま、ナミがちょっと待ってと声を上げたがそれはもう女の声であり元のそれであった。


「戻ってる…?!」

「はぁ!?あれはアイツの能力じゃないのか!?」
『ローさんの能力ですよ?』
「じゃあなんで!?」


ナミに詰め寄られあー、うー、と歯切れを悪くしたユリエだったが今自分が何をしに下に降りてきたのかを思い出してあっと扉へ振り返った。


『…えっと…企業秘密です』


そして扉の前へ立ち、扉の厚さや強度を目で測る。
あくまでも推察にしかならないがローの言う"燃やせ"は軽く溶かして隙間を塞げということだろう。
ならば完全に燃やしては逆効果どころか命までさらされることとなる。

そして、扉に翳した手をゆっくりと燃やしていく。
すぅっと息を吸ってユリエはその身を炎へ変えた。


『鏡火炎!』


この寒いパンクハザードの雪山にそぐわない赤。
だが誰もが驚いたのはそのことには限ったことではない。

―なぜ、死んだはずの火拳のエースの悪魔の実の能力を使えるものがいるのか。

それが一番の疑問であり問題点なのだ。
燃え盛る炎が消えた時、溶けていた扉の表面がまた低い気温で固まる。
これならもうガスの入ってくる隙間はないだろう。

何食わぬ顔で作業を終わらせたユリエがまたROOMと呟きローの横へと帰ってくれば、絶句していたルフィが思わずユリエの傍へと駆け寄った。


「なぁ、今のってエースの技だよな…!?なんでお前が使えるんだ!?あとトラ男の技も!」
「…そんな悪魔の実の能力は聞いたことがねェが」

『一応…悪魔の実の能力じゃないですよ』

「なら、さっき捕まってた時に彼女は脱出できたんじゃないかしら?」
『できましたよ?でもローさんが使うなって言ったので』
「こいつはあくまでも最終手段だからな」


ユリエの手を引いてルフィから遠ざけ、ローは自分の胸に彼女をすっぽりと収めた。


「…最終兵器って訳だ」
「ユリエは兵器じゃねェ。あんな毒ガスとかなんかと同等にするなよ白猟屋」

『あ、あの…?』
「あら、随分執着するのね」
「何とでも言え」








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あ、ちょっとまって収集付かなくなった(しろめ