キッチンが爆発しただなんて、誰が言って信じるでしょうか。
でも現に今、私の目の前でキッチンはまるで混沌としたものに何かをされたのではと言わんばかりに黒い。
名にがって、キッチンがですよ?

『…私、ホットチョコレート作ろうとしただけなのに』

おかしい。
確かホットチョコレートってミルクとチョコを温めるだけでできる筈じゃありませんでしたっけ?

「誰かキッチンにいるのか?」
『あっ…』

このキッチンの主とでも言おう彼。
そして一瞬でキッチンの惨劇を見て目を見開いた彼は慌ててへたり込んでいた私の手を取った。

「怪我はない?大丈夫?」

爆発した際に飛び散ったチョコレート。
彼は少しごげ付いて黒くなったそれをジェントルマンな手つきで拭ってくれる。

『えっと…一応大丈夫です。はい』
「そりゃよかった。で、お姫様は何を作ろうとしていたんだい?」
『…ホットチョコレートを…』

その言葉に、彼が苦笑いしたのがわかる。
そりゃあそうかもしれない。
だって私がこんなことにしたキッチンで作られる彼の料理は本当にキラキラしていて美味しいから。

「なら、一緒に作ろっか」

苦笑いから、はにかんだよう変わった笑顔で、また差し出された手を取った。
今度は上手くできると思う。
だから作ろうかな。
貴方の分のホットチョコレートも。