月夜に照らし出された部屋の中。

その明るさに電灯の光など必要なくて、私は月という名の最高のスポットライトを浴びて窓の淵へ腰を下ろした。
私の後ろには大量に積み重なった書類。
きっと明日はあれに追われることになるのだろう。

紙と向き合って1日を過ごすのは私に合わない。
別に嫌いな訳じゃないけれど、私には外の世界の方が似合っている。
バカな不届きもの相手に剣を抜く方が心が落ち着く。

なんて思っても結局私も女な訳で。
それこそ月並みの言葉しか出てこないけど、やっぱり綺麗だって思う。


『お酒でも飲みたいなー』
「飲めばイイじゃねーか」

『ぬぁっ?!いいいいたんですかどうも』


月を隠す雲を吐き出すように口から吐き出す動作はやっぱりかっこいい。
突然の登場に驚いて窓の淵から落ちかけた所を見られるとはなんともみっともないこと。


「月見酒なんて乙じゃねぇか」

『明日の仕事に響いても?』
「俺がそんなに飲ませねぇよ」


そう言って彼も少し飲もうとしていたのか、机の上へ上等な酒瓶を置いた。

言った通り本当にコップ一杯だけの月見酒。
私と貴方の秘密の乾杯は、月だけが知っている。