燃え盛る赤色に目を奪われた回数を、私は覚えていない。
覚えていない、と言っても数えようと思ったこともないのだけど。
だけど初めて目を奪われた赤と、最後に目を奪われた赤い色を、私は決して忘れないだろう。

唯一、私の記憶に残る赤を。

絆も、誇りも、大事なものを全て背負ったあの背中から滲んだ赤を、私は一生忘れない。
真っ赤に染まった貴方の体を抱き、私の腕までを染めた血の色がこびりついて離れなくて。

それでも貴方は笑ってた。

私が貴方を愛し、貴方が私を愛したことにぽつりと感謝を残して。

バカな人。

死にゆく自分より「俺の事は忘れてもいいから幸せになれよ」だなんて。
赤く染まるその跡に、大きな涙の跡が伝った。
私が忘れるとでも思っているのだろうか。
忘れられる筈もない、幸せを残してくれたのは貴方だと言うのに。

掌から零れた命。
掌にこびり付いて離れない赤い記憶。



でも1つ、貴方は覚えているでしょうか


真っ赤に燃えるような恋を教えてくれたのは貴方だったと言うことを。