パパはお酒を1番美味しくなる方法を知っていた。

仲間たちとただ騒ぎ、歌い、飲む。
ただそれだけのやり取りなのに、パパは本当に楽しそうにお酒を飲んでいた。
それを思っていたのはきっと私だけではない。
それ以前にお酒を飲むことだけでなく、何事にも今を楽しんでいたパパを嫌っていた人なんていないんじゃないかとすら思うけど。

でもね、パパ

やっぱりパパのいない宴なんて楽しくないよ。
何を飲んでも美味しくないの



酒場に似つかわしくない怒号と悲鳴。
私の手に少し滴る強いアルコールの匂い。
そしてガシャン、とまた1つ酒瓶の割れる音。

聞こえてくる声が皆酒を不味くする。
酷く、不愉快だ。

なら、燃やしてしまえばいいんじゃないかな。

心の中の自分が囁いてくる。
酒を不味くする原因を無くすことに酒を使う。
あぁなんて矛盾しているんだろう。
隣で燃え盛る肉片を見つめてボーっとパパを思い出す。


ねぇパパ。お酒の美味しくなる方法、もう一度私に教えてよ。

持っていたお酒の入った透明なグラスに、ぽつりと私の涙が波紋を描いた。