見える愛の種類は果てなく
かといって見える愛の種類もあるとも思えなくて

だからこそ、色付いた世界が一瞬で黒に染まる事が怖くなる
知ってしまった温もりを手放すことが恐ろしくなる。
夜の訪れを待つように光を恐れ、はたまた光の訪れを待つように闇を恐れる。

たまにそれを見失って迷っては、掬い上げてくれる貴方がいた。

世界は命が尽きるまで回り続けるから。
いや、自分の世界は終わってしまっても世界自身は回り続ける。
1度しかない人生を"悔いのないように生きる"のは貴方の口癖で。

その背中を見つめていたら、私も自分の全てが終わるまで貴方に全部捧げたくなった。


『大好きです』


告げたのは愛を聴かせる為の言葉。
でも、私は知っていた。

零れていく滴は、全てを知っていたのだから。


―「なぁエル」
―『はい』

―「俺ー……」


愛を聴かせる為の言葉を知ってるのに
消えたカゲロウに手を伸ばした私に、愛を語る為の言葉はない

恋は1人じゃ、愛にはならないから

泣き濡れて震えたって、はるか遠い貴方の面影はただ恋い焦がれるだけの温もりだったから。
幻を掴み取って、それを真実だと泣いて。
枯れ果てるまで流れた涙に偏ったこの想いの比重は悲しみを増していくだけ。

しかし冷めない熱が私を駆り立てるから。




見開いた目に映ったいつもの光景に私は思わず周りを見渡した。
変にかいた汗のせいでギュッと握った拳に食い込んだ爪が現実を感じさせる。

どくんといつも以上に大きく波打つ心臓。
ここの所、やけに夢見が悪い。
よりにもよって、なんでエースさんが。

こめかみ辺りを伝った汗を拭って、私は自室を飛び出した。

今この船は春島に停泊している。


『マルコさん!』
「おう、どうしたよいエル。そんなに慌てて…」

『エースさん!』
「は?エース…?」
『エースさんどこです!?』


私の荒げた声に驚いたのかマルコさんが目を見開いているのがわかった。
周りにいた人も珍しく私が大声を上げたことに驚いている。
でも今はそんな事気にしてられなくて。

ただ、あの背中を探したかった。


「エースならさっき森の中に探索に行ったよい」

『ありがとうございます…!』


形振り構わず私はモビーを飛び出した。
広い森の中、どこにエースさんがいるなんかなんて知らない。

それでも私は、暗闇の中で1筋の光を見つけなきゃいけない。
儚く見える光。
でも貴方はその光を無限大に大きくするから。

春島独特の温かい空気、青々と茂る緑や花。
もしも私の心にゆとりがあったなら皆でピクニックでもしたいと思っただろうか。
確実に思っていただろうけどただ一心不乱に探すのは今さっき手を伸ばしたあの姿だけ。

舞い散る花びらに儚い想い馳せても、舞う花は何も感じはしないだろう。

ただ感じるのは私の心。
そして感じたいのは貴方の心。


『エースさん!』
「うおおぉっ!?エル!?」


抱きしめて震えたって、それは人並みな秘め事。

命が散ること自体に罪はない。
それは人生と言うただのありきたりな物語。

ただ、そうなって欲しくないと言う私のエゴ。


「なんだ!?今日は船に残るって言ってなかったか!?」
『……好き…』

「…へっ…」

『好き…好き…大好き…!』


震える声で声を発して、震える腕で逞しい体に腕を回す。
貴方はここにいるから。



「おう。俺も好き。愛してる」



愛を聴かせる為の言葉を知ってるのに
愛を語る為の言葉はない

でも、貴方がいればきっと愛を語る言葉は形を成すから。

突然の事にもエースさんは私を抱きしめて愛を聴かせてくれた。
それだけでこの言葉は独りよがりな恋じゃなくて愛に変わるから。


「なぁエル」
『…はい?』

「たまにはエルも愛してるって言ってくれよ」


あぁ、愛されてるんだなって。
自惚れじゃなくて、本当に。



『愛してます。誰よりもなによりも。ポートガス・D・エースを』



貴方と愛を語りたいから。
今日も私は愛の言葉を紡ぎます。





-------------

この2人の文は大体一緒になりがちだけど自己満足なので気にしない
今回はGRANRODEOの「偏愛の輪舞曲」を聴きながらですん