えぐ、えぐ、と嗚咽を漏らすような声が部屋の一角に響く。
大とはまだ言えないものの大人がこのように大胆に泣くものだろうか。
とはいえ実際に泣いている21歳がいるのだから仕方がない。


「なんだ、また泣いてるのか」

『だっ、誰のせいだと思ってるんですかぁ…!』
「待て待てソファーは投げるな後が面倒だ」
『…もうっ…!』


ドスンと大きな音を立てて床に落ちたソファ。
細身の体のどこにそんな力があるのかと疑問になるがレイアの細身にはその力がある。
偉大なる航路に解明しきれない不思議はあるとは言え人体の不思議も侮れないものだ。
照れ隠しか泣き隠しか、ドフラミンゴの指示により手から投擲物を無くした手はぎゅっとパーカーの裾を掴んだ。

やめろと言われてもなかなかやめられない癖。

その様子を見たドフラミンゴは今しがたレイアが降ろしたソファにその巨体を沈める。


『え、きゃっ!』

「フッフッフ!それはやめろと言ったろ」


スッと動かした指先に、操られる体。
勝手に動いた足はふらふらと距離を詰め、あっという間に体はソファに座ったドフラミンゴの膝の上へ。


「掴むならこっちにしておけ」
『…でも』

「まぁやらないならさせるまでだが」

『あっ』


長い武骨な指を1つ2つと曲げればレイアの手が桃色のコートへ伸びる。
その手が掴んだのはもふもふと手当りのいいそれ。
自分の意志ではないのに動く体と言うことには違和感しか感じないが確実に動いているのは自分の体。

掴んだコートの柔らかさに驚いている暇もなくドフラミンゴの大きく開いた胸元がちらついて、目を背けたくなるが自分の意志で動かない体はそれをさせてくれない。

いつも掴んでいる自分の服とは違う感触が気持ちいいような、悪いような。
柔らかいコートの感触を感じながら、自分の頭を掴むように降って来た大きな手。
身を抗うことができないならもうこのままでいいかと、レイアは勝手に動く体を彼に預けることにした。