「えっと、加州くんが言ってたお店はここかな?」
「ん、ちょっと地図見せて」
「はい」
「んー……うん、ここでいいと思う」
加州くんの気遣いで、「俺のおすすめの店教えてあげるね」と言って店名と地図をかいたメモ帳を手渡してくれた。放課後になり、私と安定くんはメモ帳の地図を頼りにお店を訪ねると、男の子でも入りやすいようなレトロな雰囲気のお店だった。
「ネックレスとかも売ってるみたい」
「ネックレスか……」
「?」
少し顔をしかめた安定くんに、声をかけようとするとすぐに戻ってなんでもないと流されてしまった。
少し店内を歩けば、すぐに色とりどりのマニキュアが目に入る。紅から、桃、橙、緑、黄、茶、黒など色々ある。ラメ入りや模様が入ったものもあって多種多様で見ているだけで飽きない。
「どれを買うの?」
「うーん、どれも綺麗……」
「確かにね。まぁ塗る気はしないけど」
私の雑誌を読みながらちらりと棚を見やる。そしてすぐに雑誌に目を落としていたけど、見ていた部分を私も同じように見れば真紅のマニキュアだったことを気付いていないのかな。
「(あ、かわいいこれ……)」
ひとつのマニキュアを手に取る。手に取ったマニキュアは、藍色でラメが小さな星の形をしている。かわいいなぁ、これ。
「私、これ買ってきます!」
「あ、うん」
早速レジを通して小さな小包を手にお店を出れば「買えた?」と声をかけてくる安定くんと、加州くんがいた。
「か、加州くん!?」
「部活抜けてきた。どんなの買ったの?」
「え、えっとこれ……」
がさがさと小包からマニキュアを見せれば「おー、かわいいね」と反応が返ってくる。ふと安定くんを見てみるとちょっと嬉しそうな顔をしていた。
「……藍色、ね」
「なんで赤にしなかったのー!」
「なんだか、綺麗だったから……」
時間あるなら今から塗る?と加州くん。……どうしようかな、まだ時間あるしお願いしちゃおうかなぁ……。
「うん、じゃあお願いします」
「了解。安定、お前は?」
「僕は、この雑誌買わないと」
「あ、あの、それでよかったらあげる!」
「え?でも」
「今日付き合ってくれたお礼、にはならないかもしれないんだけど……」
よく考えてみると、私のお古でしかない雑誌だ。全然お礼じゃないしむしろ押し付けてる気がする。……尻すぼみしてしまうのは致し方のないことだ。
「ありがとう、嬉しいよ」
「ほ、ほんと?」
「うん、大事にするね」
お世辞を言わせてしまったのかと心苦しくなったが、安定くんを見ると本気で言ったことが伝わるくらい、優しい笑顔を浮かべていて。また、心がきゅうっとする。
「じゃー、行こ」
「うん!」
prev / next