純愛主義者 | ナノ


  恋に落ちるそんな予感


「なーなー安定ー」
「……」
「無視すんなよー!なー!」
「うるさい」
「聞いてくれよー」
「うるさいな、首落ちて死ね」

 ちらりと雑誌の端から彼らを盗み見る。あんみつ組と呼ばれる赤と青の二人はなんだかんだでとても仲がいい。ちなみにあんみつというのは安定のあんと清光のみつであんみつだ。そっちが好きな女子にはとても受けている、らしい。

「っ……」

 ちらりと振り向いた安定くんと、目が合った。ぱっと雑誌に顔を隠す。……ああ、絶対変な奴だと思われた。どうしよう、やだなぁ。なんて考えているとガタガタと椅子を立つ音が聞こえる。……えっ、なに?見れないけど怖い。

「ねえねえ」
「へぁ……!?」

 変な声出ました。だって声かけられるなんて思ってなかったんだもん!
 恐る恐る顔を上げてみると、不思議そうな顔をした安定くんがこちらを見ていた。……ごめんね、安定くん、変な子で。

「これ、沖田くん載ってる?」
「沖田くんって、沖田総司のこと?」
「うん」
「さっき載ってたよ」
「本当!?ちょっと見せてもらってもいい?」
「う、うん」

 ぱらぱらと沖田総司のページを開いて渡すと、前の席に座ってキラキラした瞳で読み始めた。……沖田さんが好きなのかな、きっとそうなんだろうな。

「あー、また読んでるの?」
「読んでるんだから静かにしなよ」
「ごめんね、えーっと、梓音ちゃん?」
「っ、全然!」

 彼は加州清光くん。安定くんと仲良しで、二人で一人みたいなところがあるようにも思える。爪にマニキュアを塗ってて、たまに女子みたいな会話をしている。

「安定くんは沖田くんが好きなの?」
「うん、好き」
「……そうなんだ、私も好きだよ」
「そうなの?」
「あの刀、両方ともかっこいいよね」
「…………」
「…………」

 沖田総司の使っていた刀は、柄の部分が赤と青で、加州くんと安定くんみたいだ、と告げようとすればなんだか二人共顔が赤いような気がする。

「……どうかしたの?」
「えっ、あ、いや」
「清光、顔赤いよ?」
「お前もだろ!?」

 ぱっと顔を覆った手には真紅のマニキュアが塗られていた。細くて長い指に、紅が映えていて見惚れてしまった。

「……ん?」
「加州くんの爪、綺麗だよね」
「そー?」
「うん、私マニキュアとか塗ったことなくて」
「塗ってあげよっか?」
「え?本当?」
「うんうん、昼休みとかにでも」
「……迷惑じゃない?」
「全然迷惑じゃないって」

 加州くんに爪の話題を出せば、輝いた顔を見せて乗っかってきてくれた。ちょっとだけ近寄りがたい感じがしたけどやっぱり人は見た目じゃないよね。

「あ、でも」
「うん?」
「マニキュアは自分で買いたいから明日でもいい?」
「いいよ、付き合おうか?」
「うーん……二人とも部活あるでしょ?」
「あ、そうだった」
「僕ないから付き合ってもいいけど」
「は!?」
「本当?」
「うん、この雑誌買いたいし」
「安定、お前……」

 雑誌から顔をあげた安定くんが買い物に付き合う、と言ってくれた。加州くんは部活があるみたいだから、二人きりで買い物ってことになるのかな。……生まれてこの方色恋には弱くて経験が少ないから二人きりとかとても緊張するんだけど。

「行く?」
「……う、うん」

 しかし、断る理由もないので受けてしまった。……どうしよう、胃が痛くなってきた。

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