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暖かな風。
蝉が鳴き止み、向日葵も散った。
……夏ももう終わる。
「なぁ、シカマル……」
奈良家の縁側に座って庭の木々をのんびりと愛でる。
砂漠には木が少ない。
水も少ないから夏場は観光とかも滅多にない。
木の葉の里はきらきらと光り、木々が青々としていてとても綺麗だ。
テマリはそんな事を思いつつ、隣に寝転がっているシカマルに声を掛けた。
「んー?……なんだよ?」
「なんでもない」
シカマルのやる気のない返事にクスクスと笑う。
そんなだらしない返事でさえも愛しいと思ってしまう。
自分が此処までシカマルを好きになるとは思わなかった。
うちはサスケ奪還作戦の時、シカマルが流した涙。
私はこいつの泣き顔に、涙に、惚れたのかもしれない。
まぁ、あの時から泣いた顔なんて見てないけどな。
「………シカマル……」
「……なんだ?」
「…木の葉の里は綺麗だな。人も賑わって、平和で。」
こんなにも…素直な気持ちになれる……好いところだ。
「…そうだな……でもよ。俺は砂の里も好きだぜ。凛々しくて、強くて、背筋をピンと伸ばして前を見てる。 ……格好いいじゃねぇか。」
そういうシカマルは、ずっと空ばかりを見ていて、綺麗に微笑んでいた。
そんな姿も格好良くて、私は目を逸らせなかった。
「…なんだよ。見んな…。」
ちらりとこちらに目を向けたシカマルは照れていて、またそれも可愛く思えて…。
「フフッ……シカマル、好きだぞ。」
素直な気持ちを言葉にして。
夏から秋へ吹く風に乗せた。
END
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