リセット

俺には前世というものの記憶がある。
全てを憶えとるわけやない。
人の顔は靄が掛かっているみたいでよお分からないし、声とかも思い出せへん。
でも自分がどういう者だったかはよう知っとる。

あの新撰組の忍、密偵やったらしい。

夢で前世の事をよぉ見るが、いつも決まって、黒い着物を着た男と一緒にいる夢を見る。
胸が苦しゅうなって、妙に泣けてきた。
今すぐにでも会いたいと、心が叫ぶ。

『    』

名前を…呼びたい。
会って、抱きついて、キスして、名前を呼んで、呼ばれて…それから………

無駄やのに…。
会えるわけないやろ?
こんなん考えたところで、無駄なだけやのになぁ…

こんな胸が苦しくなるだけの記憶なら、いらなかった。
逢えないのなら……あの人の全てを、思い出さなければ良かったのに…





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