世界を変える方法

梵は悪い子だ。

母上を苦しまている。
梵の右目が病気になってから、母様は笑わなくなった。

梵は悪い子だ。

父上を悲しませている。
梵が引きこもってから父上は周りから嫌な目で見られている。
梵が生まれてこなければ……
梵の右目が病気にならなければ……
母上を苦しませなくて良かったのに…
父上を悲しませなくて良かったのに…
弟を…殺さなくてすんだのに…

あぁ、梵は悪い子だ。

「梵天丸様?どうなさいました。」

上から降り掛かった何処かで聞いた声。

「……誰だ…」
「梵天丸様のお父上の小姓でございます。景綱と申します。」

何かお悩みですか?
優しい声だ。
久しぶりに聞いた、優しい声。

「うるさい、向こうに行け!!」

(行かないで…)
(傍に居て…)

「俺を見るなっ!!」

(俺を見て…)
(見捨てないで…)

「梵天丸様。」

景綱と名乗った父上の小姓は俺の隣に腰を下ろした。

「梵天丸様はお父上がお好きですか?」

何を意味の分からない事を言いだすのだ。
景綱の顔を見上げると、先を足すように見つめてくる。

「……好きだ。」
「ならば、お母上はお好きですか?」
「…好きだ。」
「そうですか。ならば梵天丸様。もっと自分に自信をお持ちなさい。」
「え?」
「大事なのでしょう?お父上とお母上が。ならば強くおなりなさい。」
「強くなって、輝宗様が心配をなさらなくてすむような、立派な伊達の当主におなりなさい。お母上を護って差し上げなさい。」
「お父上やお母上だけではありません。奥州の民や、貴方に将来付くことになる家来たちを、貴方が護るのです。」
「奥州の民在ってこその伊達なのですから。」
「皆を護るためには強さが必要です。ですが、自信が無くては強さが発揮出来ないのです。だから梵天丸様はまず、自分は将来伊達を奥州を担う者なのだと自信をお持ち下さい。」

そう言って景綱は俺に笑いかけ、立ち上がった。

「それでは梵天丸様、景綱は仕事がありますゆえ、これにて失礼させていただきます。」

景綱が去った後も俺の頭の中では景綱が言ったことがぐるぐる回っていた。


護る…父上と母上を…奥州の民を…
皆を護るためには…強くなる…

バッと空を見上げる。
さっきまでは灰色に見えていた空は、清々しい程の晴天だった。


──世界が変わったような気がした。

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