弱音

蒼白い月明かりが部屋を満たす。
灯りのついていない部屋は青い影を落とすまま、その部屋の主を照らしていた。

部屋の主、ケイネスはベッドに身を沈ませ、ぐったりと力を抜いたままだ。
少し頬も痩け、いつもはきちんと整えている金髪も輝きを失っているようにも思う。
ケイネスは微かに身動ぎ、何もない空間に声をかけた。

「いつまでそこに居るつもりだ………」

静かな室内には、ポツリと呟いた言葉さえよく響く。
ゆらゆらと影が揺れ、次第にはっきりとした人型を映しだす。
その人型は、波打つ髪を無造作に後ろに撫で付け、凛々しい美貌を惜し気もなく晒している。
ケイネスのサーヴァントであるランサーだ。
ランサーは黙ったまま、ケイネスの元へとそっと近寄る。
シーツに投げ出された手を取り、そっと握り締める。

「お前が来てから……」

ぽつりぽつりと小さく言葉を紡ぐケイネス。
今にも掻き消えそうなその声を聞き逃すまいと、ランサーはケイネスへとそっと身体を寄せる。

「…お前が来てから……ろくな事が無い……あんな馬鹿そうな英霊に馬鹿にされるし……ソラウはお前にばかり執心で……」

いつもの自信に溢れた声とは程遠い、弱々しい声であり、気が弱っているのが分かった。

「我が主よ……そんな悲観にならないでください。このディルムッド・オディナ、必ずや主に聖杯を捧げますゆえ……」

何か外敵から守るかのように、ランサーはケイネスを抱きしめる。
大切に、壊れないように。
そっと、でも思いは強く、掻き抱いた。

月がボンヤリと青く輝くその世界に、二人はいた。

END

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