02

人の気配を感じて、砂邪は足を止めた。
 
事件現場だからといって、平日の真っ昼間の今、野次馬の可能性は低いはず
と言うことは警官、あるいは――同業者
どちらにせよ、見つかると面倒だ
 
砂邪は息を殺してブルーシートに囲まれたその場所へ、慎重に近づく
 
「誰だ」
 
一瞬にして、背筋が凍りついた
気配と殺気
どちらも消しておいたというのに、まさかバレるとは
 
僅かな焦りを感じると同時に、聞き覚えのある声にある人物の顔が思い浮かんだ
敵かもしれない可能性を考え、そっとブルーシートで仕切られた空間に目を覗かせる
ブルーシートの中で見えた人物。
その見覚えのある姿に、砂邪は恐る恐る声をかけた。
 
「悠……?」
「……砂邪、さん?」
 
相手も自分に気づいた事を確認し、砂邪は胸を撫で下ろした
ブルーシートを手で除けながらも中に入ると、砂邪は悠に近寄る。
 
「何してるの、こんな所で」
 
静かな声で砂邪がそう言えば、悠は苦笑にも似た笑みを浮かべた。
 
「多分、今砂邪さんが考えてることと同じだと」
「……9代目から?」
「えぇ。そちらはザンザスから、ですかね?」
 
悠の言葉に砂邪は小さく頷き、そのまま足元の血痕へ視線を落とした。
 
 
「随分大胆な宣戦布告だね」
「ほんと、何考えてんだか…」
 
悠は理解できない、と言うように肩をすくめた。
砂邪は静かに、罰印のつけられた貝殻マークを観察している。
 
「ねぇ、砂邪さん。…手、組みません?」
 
悠の言葉に砂邪は静かに視線を悠の方へ向けた。
 
「ボス同士の仲は良いとは言えないけど、同じボンゴレなんだし」
「……友好的じゃないのは、こっちのボスだけどね」
 
苦笑する砂邪に、悠も苦笑で返す。
確かに、沢田綱吉および9代目は友好的だ
一度、間をおいた砂邪は右手を差し出した
 
「まあでも、その案には賛成。よろしくね」
「こちらこそ」
 
悠はその手をとって、砂邪は薄く笑うのだった


[ 8/19 ]

[←] []
[mokuji]
[しおりを挟む]