パステルカラーが永遠に広がる中で、ふわりと甘い香りがする。

「なまえ。」

不意に聞こえた私の名を呼ぶ優しい声。
その声の主はすぐに分かった。

『香くん?』

振り返るとそこには微笑む香くんがいて。
ゆっくりとこちらへ近づいてきた。

『どうしたの?』
「あぁ、ちょっとなまえ不足的な?」

そう言うや否や、香くんがぎゅうっと抱きついてくる。
突然の出来事に私はただ香くんにひっつくほかなかった。

「なまえって軽そうっすよね。」

私を抱き締めたままの状態で香くんが呟く。

『え?』
「ちょっと失礼。」

香くんは抱き締めている腕の力を弱め私から少し離れたかと思うと、途端にひょいっと私を横抱きにした。

『ちょ…い、イィよ!!』
「Why?つかなまえ軽すぎ。」
『嘘。そんなわけないじゃん…』
「俺嘘とか苦手なの知ってるっしょ?今のお世辞とかそういうのじゃない的な。」

いつもより香くんの顔が近くにあるからか、それとも珍しく真剣な表情だからか、はたまた両者か、私は顔から火が出る思いだった。

まともに目を合わせることも出来ない。

「緊張してる系?照れてるなまえマジcute…」

あぁ、とうとう呼吸すらままならなくなってきた。

「やっぱ俺なまえのこと好きだわ。」

クスッと笑った香くんは、次第に顔近付けてきて―――




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