いつもの如く、部活に行くために浜野と速水とサッカー棟に向かって歩いていると、浜野が「そういえばさぁ、あれからどーなった?」とか突然聞いてきたもんだから一瞬意味が全くわからなかった。脈絡のある話しやがれ。

「…別に、どうもなってねぇよ」

「えー…、本当?ちゅーとか抱きしめたりとかー、なんかないわけ?」

「なんもねーって、寧ろどうやったらあの常態からそんなことに至るんだよ。」

ちぇー、つまんないの。って文句有り気に言われたって、事実なんだからしょうがねぇだろ。もう次の話題を出してるあたり浜野らしいけどよ。速水は、少しきょとんとした顔で話を聞いていただけで、何も聞いてこないまま、浜野の話に入っていった。ある意味有り難い。








いつも通りに練習を終え、仕度をしてから帰ろとしていたらなまえが近寄ってきて、またいつも通りいっしょに帰り道を歩いていく。とくに約束はしてないけれどなんだかそれが習慣づいていた。まぁなまえが、恋人同士なんだから!って言ってきたせいもあるかも知れない。


『ねぇ、倉間ってさー、なんでそんなに身長差気にするの?』

「別に、どんくらい差あったって、どっちが高くたって良くない?」
そうやって言われるのは良い気もするけど、実際、気分的に良くないんだよなぁ…。

「女より男の方が小せぇとかなんか嫌だろ。」

『そうなのかなぁ…』

いまいち解らないっていう表情をして、頭にはてなを浮かべながら歩くなまえ。
まぁ別にわかって貰えなくても良いか、って思ったときに、「例えば他にはどんなことが嫌なの?」ってなまえが少し真剣な顔して聞いてきたから思わず怪訝な顔になる。例えば、って言われてもなぁ…。

『浜野がね、倉間が不便だって言ってたって言ってて、どんなことになのかな、って思ってたんだよね』

あの野郎…!なんでもかんでも話やがって!全部俺が悪いのか、言った俺が悪かったんだな。脳内で叫んでいると舌打ちしそうになって、危ないと思い思考をシャットダウンした。

「……別に、なにも」

あからさまな嘘のような物を言っても、浜野に聞いたって言ってんだからごまかしようも何も無いわけで、「なになに、私に言えないって言うのかー?」って、凄い変な突っ掛かり方をしてきた。

何故だかどんどん寄ってくるなまえに思わず後ろに後退るけど、もう壁がすぐそこで、すげーっ恥ずかしいけど、言うしかなさそうだ。


「………ス……と…、」

『…え?』

「…っ、キスとかするとき、なまえに屈まれたりするのって、なんか、嫌だろ…!!」

そこが、なんかこう、他の奴だったら平気なんだろうなって思うと、自分からはなかなか出来ないのが不便感が否めないっていうかなんていうか…。あー、くそっ、すげぇ恥ずかしい、穴があったら入りたいって正にこんな感じだ。やけになってると、なまえは軽い放心状態になって、顔だけが徐々に赤くなっていっていた。

『く…、倉間…!!』

可愛すぎるよ!そう叫んで、抱き着いてきた。唐突すぎて避けられ無かったこの状況をどうしてくれよう。一応、公共の道だ、人だってそこそこ居るわけで、目線が居たいというか、物凄く嫌な感じがする。そもそも普通立場逆だろ!

『そんなこと悩んでたとか、すっごく可愛いよ』

「男に可愛い可愛い連呼すんな!あと、はやく離せ」

『あはは、ごめんごめん。』

笑いながら離れたなまえに少し残念な気もしたのは絶対に気のせいだ、ありえない。


『でもさー、それ言っちゃったら立ってるときキス出来ないじゃん。』

そんなこと重々承知だ。というか、女がそういうことさらっと言うのってどうなんだよ…。

『……んー、…あ、わかった。』

倉間、って呼ばれてなまえを見上げれば、なまえは目を閉じていて、少しだけ唇を前に出していた。俺が、何がしたいんだとでもいう様な感じで突っ立ってると、なまえが「早くー」とか言ってきた。


『屈まないで待ってるから、早くキスしてみろってこと』

なまえが俺の心の中を読んだかのように、薄く目をあけて挑発的な口調でいってきた。なんかむかつくな、これ。でも、だからって普通に立ってるだけじゃなまえのキスなんか出来ねぇし…。

頭を少し回転させると、一つの案が浮かんだ。なんかすげー簡単なことじゃん。



俺は少し、あくまで少しだけ背伸びをして、なまえの唇に重ねた。
もう、道端だから目線が刺さるとか女々しいことは頭から抜けていた。するとなまえが、えへへとか笑って「よく出来ました。」って頭を撫でようとしてきた。

「やめろって、それに、お前がうるせーから仕方なくしただけだっての!」

『はいはい、全く、素直じゃないんだからー』

そんなこと言われなくても自分が1番わかってるっての。やっぱり、どう転んでも俺はなまえには勝てないってことか…。





「…思ったんだけどよ、屈ませるのも背伸びもあんま変わんなくね?」

『そんなことないよー。気分的にはちょっとは背伸びの方が良くない?』

「……まぁ、そうだけど。」

『ならいいじゃん。』

何かが違う気がするのは俺だけか?


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