『ねー、蘭ちゃん』
「なんですか?というか、その呼び方やめてください。」
『蘭ちゃんってサッカー部だよね?』
「…は?」
この人、何を今更…。呼び方のことは置いといて、俺たちが会ったのはサッカー部だ。たしか、なまえさんが南沢さんに強制的に連れてこられたのが最初だったはず。それなのに、頭が可笑しくなったのか。
『でさ、髪の色が薄い水色で、片目隠れてて、ちっちゃくて生意気そうな子いんじゃん?』
「…倉間のことですか?」
随分と具体的な特徴を出してくれたからわかったけど…。なんか倉間からしたら侮辱にあたるものが入っていた気がする。
『そうそう、あの子さ可愛くない?話したこと無いけど、南沢とかと話してるの見てたらなんかこう、キュンときた。』
キュンときたって…。この前もそんなことを言ってた気がする。その時は神童だったっけ。なんでも、すぐ泣くところが良いんだとか…。
「神童はどうしたんですか」
『それはそれ、美味しいものは何個あっても良いんだよ?倉間くんはアレだよね、生意気な癖に意外とデレるところが良いよ。』
「……はぁ」
はっきり言ってよくわからない。まず、美味しいものってなんなんだよ。
『サッカー部ってさぁ、なんか可愛…もとい、素敵な子多くない?』
「…そうですか?」
『うん、新しく入った一年生も可愛いよね。なんかこう癒される』
「そうですか、」
なんか話が分からなすぎて返答が面倒臭くなってきた…。
『あ、でも学年で言ったらやっぱ二年生の子たちが一番好きかなぁ。皆いい子だし可愛いし!』
「そうですか」
『…人の話聞いてる?霧野くん。まず、せめて本読むのやめてよ、寂しいじゃん』
「………」
寂しいなんてこっちのセリフだ。折角、好きな人と二人きりなのに他の奴の、しかも惚れただのなんだの言ってる話を聞かされる身にもなってほしい。正直、妬くし。
…まぁ、一応、拗ねられても困るから読むのは中断しておこう。
『んー……あ!もしかして、他の子の話されるの嫌だった?』
「……っ…!?」
『嫉妬だなんて蘭ちゃんも可愛いなぁ、もう!安心してよ、本気で好きなのは蘭ちゃんだけだから』
ニコッと笑ったなまえさんは凄く可愛らしかった。
あぁ、もう。やっぱりこの人は俺の調子を狂わせる…。
(ほら、蘭ちゃんこっちおいでー、抱きしめてあげる!)
(何言ってるんですか!?やめてください!)
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