廊下を歩いているときに、ふと目に入ってきた何かが描いてあるキャンバスとその前に居る女子生徒。その教室は美術室で、中にはその女子しかいないように見えた。

「なまえ、何を書いてるんだ?」

「!…あれ、風介いつの間に」

廊下側の窓からキャンバスの中を見るように乗り出して話かけると、全く気づいて居なかったようで静かに驚いていた。まぁ廊下側に背を向けているし当然か。

「…んー…、得にイメージは無い、かな。ただ気分でバーっと。」

なまえが言っているように確かに描いてある絵はあまりにも抽象的というか、ただ筆で線を適当に描いてあるだけの様に見える。

「今日は部活は無しなのか?」

「うん、だから皆居なくて寂しいんだけどねー…。先生に頼んで教室貸して貰ったの。」

今日は気分に任せたい日だったみたいでさ。と言うなまえに、私にはあまりそういう気持ちがわからないから、ふーんとだけ言っておいた。無性にボールを蹴りたくなるときなら有るけど、それと似ているのだろうか。

「……ねぇ、風介。これさ何か連想させない?」

「…連想…?」

「うーん…、色合い的になんか…。」

これっていうのはキャンバスに描いてあるやつのことだろうけど、何かなんて言われてもな。
するとなまえは思い立ったように声をあげた。

「…あ、エイリアの時のことだ。ほら、色がチームのイメージカラーっていうか、キャプテン達の色っていうか。丁度五色だしね。」

あぁ、なるほどね。線の色の種類は5つしかなくて、白、赤、水色、黒、黄緑だからなんとなく私達がエイリアだったときの各チームの色に似てるってことか。
背景が薄い肌色のような色で塗ってあるから白も多少見やすくなっているし。

「懐かしいなぁ。そこまで前な訳でもないのに、なんだろこの感じ。」

「さあね、…恋しかったりするんじゃないか?」

「そうなの、かなぁ…。…うん、そうかも。風介達のサッカーがあんまり見れないことが少しね。」

見てるの好きだったから、そう目を細めて愁うなまえ。

「なら、なんでなまえもサッカー部に入らなかったんだ?」

「なんでだろうねー…。私が好きなのはお日さま園の皆と、皆がするサッカーだからかな…。」

「私にとって、他の人は入らないのかもしれないね。」自分で私は酷い奴だ、とでも言いたげに苦笑しながら言うなまえに、別に、それでも良いんじゃないかと思った。
だって、昔から私達がやってきたサッカーはあのお日さま園の人達の、その中だけのものだったんだから。


そしてなまえは思い出したようにもう一つ言った。


「…あぁそれに、私はこういう絵が描きたかったのかもしれないし。」


title by フォルテシモ
2012.10.04

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