気持ちが重いとはこの事か。溜息を吐いても何も変わらない現実と感情。あーぁ、こんなところ、皆には見せられないな…。
私がしっかりしなきゃ、皆を守らなきゃ、そう思う程に何かがのしかかったような重さが感じられる。
どう考えても、私には責任が大きすぎる気がしてならない。上の人たちが何を考えたか知らないけれど、私が前線の隊長だなんてね…。正直、信じられない。嬉しさの反面、同じくらいの辛さが有るのは確かだ。
国のために私が出来るのは前線に行って戦う事くらいだと思ってたから、隊長なんて予想外すぎて頭がついていかないわ。でも、私が上手くやらなきゃ、他の皆の犠牲を少しでも抑えるために。
いくら相手がどんな大国でも、どんなに無謀な戦いでも、たとえ結果が分かっていても、少しでも守れるなら悪足掻きくらいやってやろうじゃないの。
そう吹っ切れた所で思いついたことが1つ。あぁ、そうだ、あいつにはこの事言っとこうかな。
扉をノックして向こうの返事を確認してから部屋の中に入る。そうすると予想通り寛いでいるミストレがいて、そういえば今日はミストレも授業も訓練も何も無いのかと思い出した。
「何してるの?突っ立ってないで入ってきなよ。」
言われたとおりに扉の前からミストレの近くまで行って座る。なんか、言いづらいなぁ…。
もう会えなくなるなんて思いたくも無いし、認めたくもない。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、渋っていた私より先にミストレが口を開いた。
「聞いたよ、なまえが前線部隊の隊長だってね。昔っから戦う方が得意だった君からしたら嬉しい誤算なのかな?」
「うん…、まぁね。」
「…なに?なんか暗くない?」
「んー、なんか…。……ミストレと、まだ遊んでたかったなーなんてね。」
何言ってるんだろ私。下手に笑ってみても、ミストレはもう気づいただろうし、もともとわかってたんだろうな。
「まさか、他の奴のために死んでも良いとか思ってんの?」眉をひそめて言うミストレにそんなハッキリ言わないで欲しいと思ったけど、事実と言えばそうだからしょうがないか。
あんな国を相手に前線で戦うなんて何回考えたって死にに行く様な無謀なものだからね。私の反応を見て肯定ととったであろうミストレはわざと大きくため息をついた。
「あのさぁ、馬鹿なの?」
「ひ、酷くない…!?」
「責任勝手に大きくし過ぎ。だいたい、今から死ぬことだけ考えててどうするのさ」
…な、なんか、ミストレが優しい(気がする)。表情は呆れ顏だけど言ってることが、こう、私のこと気づかってくれてるというかなんていうか。違かったら自意識過剰みたいで恥ずかしいんだけど…。
「ご、ごめ…ん。」
「もし、他の奴守って死んだりしたら許さないから…。」
というか、死ぬみたいなこと自分から言うなよ。と不安げに、悲しげに発せられた声に、私までも悲しくなってくる。折角、決意できたのに。折角、皆を守ろうって、思えたのに。なんで、こんな気持ちにさせるのよ。ミストレだって、誰かを守ろうとしなくたって死ぬかもしれないってことわかってるはずなのに。
「……ねぇ、ミストレは、…私が生きて帰ってくるって信じてくれる…?」
「は…?信じるもなにも……」
「なら、信じててよ。…そしたら私、勝って、ミストレに堂々とただいまって言える様に、意地でも頑張ってくるから。」
無理やりにでも、少なくとさっきよりは本心から笑った。「…わかったよ、しょうがないな」とさっきまでの悲しげな感じは何処に行ったんだという風に相変わらず上からの言い方で言われる。しかも、少し笑って。
それだけでも私はなんか嬉しくなって、自分で決意した時よりも断然やる気が出てくるのを感じた。
あなたが、そう言ってくれるだけで私は嬉しくもなるし、信じてくれるだけで、私は頑張ろうと思えるんです。
(その気持ちが、私を一層嬉しくさせるの。)
提出:Amore!さま
2012.09.09
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