『夏美ちゃん、結婚したんだってね』

ある日のこと、ロココと一緒に話していてふと言ってしまった、簡単だけど重い言葉。ロココは、楽しそうに話していた顔を一変させ、少し俯き気味にうん、と頷いた。
私には、弱々しく笑っている気がして、心がズキッと痛む感じがしたから顔をしかめた。

ロココが夏美ちゃんを好きってことは、もう大分前から知っていた。夏美ちゃんに初めて会った時はロココと一緒だった。きっと、ロココはその時から徐々に恋をしていた。
ただの友達という関係だけど、ずっと見ていた私には、直ぐにわかって、わからざるおえなくて。隣にいても、なんだか遠い気がしてならなかった。

だからといって、私がロココのことを好きなのかなんてわからない。多分、好きとかじゃなくて、友達以上恋人未満ってやつ。所謂、大切な人。一種の意味での特別。
リトルギガンドの一部の人には、私の行動と気持ちはロココを好きな証拠だ。って言われたけど、違うと私は思い続けた。好きなんて、よくわからないものなんだもん。理解出来ないよ。



『…ごめん、ね…。』

「なんでなまえが謝るのさ、ボクは別に平気だよ。寧ろちゃんと諦めがつけられた。」

…やっぱり、マモルには勝てないや。そう自嘲気味に微笑んだロココに、また苦しさを感じる。


そんな悲しそうな顔しないで。


言ってしまいそうになった言葉を飲み込んで、替わりにそっか、と小さく呟いた。



キミもワタシも泣きそうなのはナゼ?



もし此処で泣いて、そしたら自分がロココを好きだと認めてしまいそうで、違うと言い張りたくて、あくまで特別なんだと言い聞かせるために、不自然にならない程度に少し上を向いて、力を込める。

気づいては駄目、気づかせては駄目、好きじゃないの、友達なの、だから、辛くないし、苦しくないし、痛くない、精一杯友達として応援すれば良い。
ずっと前から、自分自身にいつもそう言い聞かせていた。最近は思うことも無かったのに、私は馬鹿だ。


諦めがつけられた。ロココが言ったとき、少しでも嬉しくなった自分が凄く嫌で、他人の不幸を喜ぶなんて最低だと思った。
幸せと不幸せ、喜びと悲しみは比例する。誰かが幸せになるには誰かが不幸せになる必要があるんだよね。私はそれを見てきた、感じてきた。




今それを近くで感じることは終わったんだ。だからといって、私はロココへの気持ちを好きだと認めることはきっとしない。したくないと心が意地をはる。

私の思い、それは全部が自分を守るためにあった。傷つくことを恐れて、傷つけることを恐れて、考えを認めないで変える。いくら、本当の私がわからなくなりそうになっても、構わないで。

title by金星

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