虹は何処から出てくるんだろう?きっと、そんな好奇心旺盛な疑問を一度は持ったことがあると思うの。
現に私、みょうじ なまえは恐らくは幼稚園の時から虹をみたり、その手の話題になったときにはそんな事を疑問に持っていたりする。
虹の出来方とかは理科だかの時間に担当の教師が話をしていた気もするけど、生憎理科が得意でも無く、しかも話を基本的に聞いてなかったため、よくわからなかった。
確か、光が云々とか言ってた気がする。
でも、幾ら科学で証明出来るとか言われたって、どこから出てきたのかわからない、時間が経つとだんだん薄れていっていずれ消えてしまう、色が綺麗で儚いもの。
って思うだけの方が面白いし、神秘的でいくらでも想像を膨らませられるから、こっちのが良いと思う。
そういえば昔、ホースで水を出していたら小さな虹が出てきたことがあった。
いつもは空に掛かる大きな絶対に手の届かない虹しか見たことがなかったから、少し感動して、もしかしたら触れるかな、って試して普通にびしょ濡れになって怒られた覚えがある。今思えば随分と馬鹿なことをしたもんだ。
ともあれ、私は虹というものが好きで、他愛もない想像をするのが好き。
だけど、いやだからか、リアリズム的な考え方はしないし、周りの人にそんな考え方の話をされても夢を壊すなって言いたくなるの。
でも、私の目の前に居る剣城京介はどちらかと言うと現実主義的で、幾度となく壊しかけられたことがある。
しかし、私はめげません。今日も今日とて剣城京介に虹の話を持ち掛けます。
『ねぇ剣城、虹見に行こうよ!』
「嫌だ。」
『なんでよーっ』
「そもそも、虹なんか出て無いだろ」
『…作ればいいじゃん!』
剣城の言った通り、空は全くの快晴で雨が降ったわけじゃないから虹なんて出るわけもない。
でも、ホース借りれば上手くやればすぐ出来るんだし、簡単なんだからそれくらいの努力をしてまでみたいと言う気持ちがあれば平気なはず。
あー、でも、小さい虹だと、どこから出てるんだろうとか考えられないからなぁ…。やっぱ大きく出てるのを探さないと駄目かな?
『よし、虹探しにいこう』
「勝手に行け」
『ひっ…ひどいっ、俺も一緒に行くよ、とか言えないの!?』
「言えないな」
『ひどーいよー、』
「俺部活あるし、行くなら一人で言って来い。」
『……一人じゃつまらないじゃん…。それに、私は剣城と見たいのに』
今日の気分的に剣城と見たいだけだけど、多分こういうこと言ったら剣城は意外とほだされやすいんだよね。ほら、なんだか顔が赤っぽくなって目そらしてるし、照れやすいんだね、見かけによらずに。
『だからさー…、』
頑張ってお願いしてるのに、やっぱり無理って、剣城は虹への愛が足りてないよ!
「なんでそんなに虹見たいんだよ」
『だって綺麗じゃん。それに私は大きな虹の一番端を見てみたいの。』
出来ないなんて台詞は今もこれからも求めてませんよっ。
でも、剣城みたいに聞いてきたくせしてふーん、で終わるような反応もなんだか悲しいからやめて頂きたいな。どうせ馬鹿じゃねーのとか思ってんでしょ、剣城の馬ー鹿!
『もういいよっ、…それより、今日も優一さんの所行くの?』
「ああ、行くけど。…まさか、お前も来る気か?」
『そのまさかだよ、剣城。優一さんとしばらく会ってないからね、久々に会いたいなぁって』
だって、優一さんは私の夢を微塵も馬鹿にしたりしないで相槌をうちながら楽しそうに聞いてくれるんだもん。そっちの方が私的にも楽しいしね。
でも、なんでか剣城は来て欲しくないみたいな発言するし、ていうか来んなって顔するし、つくづく酷いと思う。
『剣城が来るなって言っても、勝手について行くから悪しからず!』
私は言い逃げのような感じで、そう言ってから部活に行くために剣城とわかれた。
その後、舌打ちでもしそうな勢いの剣城を他所に、私は鼻歌でも歌っちゃいそうな勢いでちょっとはしゃぎながら優一さんのいる病院へ向かった。
なんだかんだ一緒に行ってくれるんだから、剣城も実は良い奴なんだと思う。だからといって、夢を壊すような態度をとって良いというわけではないんだよ!
でもまぁ、良い奴なんですよー、って優一さんに報告するくらいはしてあげようかな。
そう思えた、とある夕方のことでした。
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