『ねー、ヒロ兄…』

少し甘えた目で、ヒロトの服の裾を引っ張りながら言うなまえ。普段はあまり、こんな風に控えめに話かけてこないだけあって、ヒロトは不思議に思っていた。

「どうしたの?なまえ」

『あのさ、相談あるんだけど…』

「俺に?」

思わず聞くと、なまえはこくりと頷いた。目線を合わせて、なに?と言うと、辺りを伺った様子を見せてからヒロトにだけ聞こえるように、耳の近くで小さな声で話した。







その相談を聞き終えた後、ヒロトは内容が可笑しかったのか、笑いを堪えようとした。それを見たなまえは恥ずかしそうに頬を赤くさせて、酷いと呟いて口を尖らせた。

「ははっ、ごめんごめん」

全く謝っている風に見えないヒロトを睨みつけると、頭をぽんっと優しく手を置くように叩かれ、なまえはますます不機嫌になった。

『もう、やっぱりヒロ兄に聞くんじゃなかった…。』

「まぁまぁ、そう言わないでよ。で、マサキと仲良くしたいんだっけ?」

『……うん』

「それなら、普段通りに、俺達に話かける見たいに話てみれば良いよ。」

『でも…、』

「大丈夫、なまえなら仲良くできるよ。」

微笑みながら、再度頭をぽんっと叩いて、ヒロトは行ってしまった。
叩かれた部分がなんだか暖かくて、でも子供扱いされていることが悔しいのかなまえは少し不満そうな顔をしながら前を見つめていた。

『普段、通り…』

ポツリと言われた言葉を言ってから、それが難しいのに…、と呟いた。
ちょっと前に新しく来たマサキは、馴染めないのか、信用できないのか、一人でいることが多かった。
ヒロト達がほぼ一方的に絡んでいくせいか、少しずつ心を開いている気がしたが、なまえは全くといっていい程話をしたことが無いため気になっていた。
だから、こうしてヒロトにどうしたらいいかを聞いていたのだ。






『か…狩屋くんっ』

「……誰」

『私、なまえっていうの。よろしくね。』

「………なんか用?」

欝陶しそうにするマサキに怯みそうにもなったが、なまえはそのまま続けた。

『サッカー、好きなんだよね。ヒロ兄達から聞いたよ!いつも練習頑張ってるって』

隠そうとしているわけでも無かったが、なんとなく知られていることが嫌なのかマサキは眉を潜めた。

「……それが?」

『そ、それでねっ、今度、マサキくんの練習見ててもいい?』

「……は?」

『私、狩屋くんのこともっと知りたいの。』

「なにそれ…。俺なんかのこと知ってどうすんの?それに、練習なんか見てたって…」

つまんないだけでしょ。マサキがそう言うと、なまえは少しだけ声をあげて否定した。

『そんなこと無いよ!私、練習見てるの好きだし、マサキくんサッカー上手だって聞いたから、きっと楽しい!』

笑顔で言うなまえにマサキは変な奴と呟いた。

『それに…、狩屋くんと仲良くしたいの!』

なまえは、恥ずかしそうに顔を赤くさせながら言ってから、微笑みをみせた。
マサキは、勢いにたじろぎながらも、反論しようとしたが、なまえの微笑みを見てか、そっぽを向いてしまった。

『…ね、駄目?』







「………勝手にすれば。」



(やったー!ヒロ兄、ヒロ兄!聞いて!狩屋くんがね!!練習見てもいいって!やったぁ!)
(そういうキャラ!?)

title byフォルテシモ

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