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使


サッ…、サッ…。
世話になった宿屋に、一宿一飯の恩義をしようと言ったのは誰だったか。
宿屋の掃除道具を借りて、この国を旅立つ前に掃除をしようと朝から活動していた。
こんな日も悪くない。
タケルたちは宿内を、僕とナティアは宿屋の外を箒で掃いていた。
そんなときに、ふと気付いた疑問。




カエン)「…ナティアさん」

ナティア)「ん? そっち掃き終わった?」

カエン)「いや… あのさ…」


持っていた箒を態とらしく掲げ、未だ熱心に地面を掃いているナティアの視線を掃除からそらせた。


カエン)「確かナティアさん、前に言ってたよね? 空を飛べる魔法があるって」

ナティア)「あるけど?」

カエン)「魔族ってやっぱり、箒に跨って空を飛ぶの?」


僕の言葉にナティアは固まった。


ナティア)「……え…?」


僕の言葉の意味が伝わらなかったのだろうか、ナティアは困惑した表情をしている。




カエン)「だ、だから… 魔法使いって箒に跨って空を飛ぶでしょう? こんなふうに、ひゅーっと箒に跨って空を」

ナティア)「え〜… なにそれ…」


わかりやすいように箒に跨ってみるが、ナティアの反応に、今度はこちらも困惑してしまう。


カエン)「魔法使いが空を飛ぶっていったら、箒に乗ってなんだけど… そういう文化って…?」

ナティア)「いや、無いよ」

カエン)「小さな頃は、箒に跨って空を飛ぶ真似をして遊んだのに… 魔法の存在がある実際の魔界じゃ、箒に乗って空を飛べないなんて… なんかショック…」

ナティア)「なんだろ… なんかごめん」


ナティアは謝る必要は無い。
僕が勝手にそう思っていただけだから。
そういえば、箒に跨って空を飛んでいる魔族の姿なんて見たことが無かった、そうだった。




ナティア)「…魔族はね、天使族みたいな翼は無いけど、魔力を使って身体を空へ飛ばすことが可能なんだよ …それを扱うには、かなりの特訓が必要だけどさ」

カエン)「そうなんだ…」

ナティア)「こうふわふわとね、身体が宙に浮かび上がるって感じ 縦横無尽に飛び回るってことはなかなかできないんだけど」

カエン)「へぇ… 箒は必要ないだね」


単身で空を浮遊することができるのなら、身体を支える箒も絨毯も必要無い。


ナティア)「…でさ」

カエン)「えっ?」

ナティア)「いつまで、箒に跨ってるの?」

カエン)「あ…」





>>秋空鈴音のひとこと


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