今日は、俺にとって人生最良の日と言ってもいいだろう。
 何故なら…お前を、本当の意味で抱くことが出来るのだから。


The woman who makes a man do Death.(死神を只の男にさせる女)


 ○○の身体はとても柔らかだった。
 U.S.S.に籍を置くからにはそれなりの肉体を持つ彼女も、俺に比べれば遥かに脆い。彼女に触れる時には何時だって細心の注意が必要だった。
 稽古の時は、迅速に任務遂行できるよう考え方と動き方を徹底的に叩き込んだ。俺の知らないところで敵に命を奪われぬように。
 そしてプライベートでは、愛しい女の身体を傷つけないように…。

「んっ…ハン、ク…っ」
「…ん…」

 手を○○の頬に添えながら啄ばむようにキスをしてやれば、つたなくも喜ぶような吐息を漏らしてくれた。
 可愛い可愛い恋人であり、弟子でもある○○。この行き場の無い気持ちを、お前にどうやって表現すればいいだろうとずっと考えていた。
 初心で、かつて男と付き合ったことが無いという○○。
 手を繋ぐのもキスをするのも、抱きしめるのも全て俺が初めての相手。本当に喜ばしく思う。
 恐がらせたくない。だが、もっと関係を深めたいと思ったのも事実。
 両思いになった男女が突き進む先が分からぬほど○○は子供ではない。静かに『お前を抱きたい』と言葉を紡げば、恋人は恥ずかしそうに目を伏せながらも頷いてくれた。

「あっ」
「今は、俺に全てを委ねていろ…」

 唇を離してやると俺は○○を抱き上げ、ベッドへ寝かせてやった。
 その上に覆い被さり、再びキスをしながら○○のシャツのボタンを外して、片手でブラのホックを外す。戒めを解かれた乳房が現れた。
 触れようと思ったが、泣きそうな声が聞こえてきた。

「あ、あの…っ、は、恥ずかしいんですけど…」
「…何も恥ずかしいことなど無いだろう」
「で、でもぉ…」
「…俺はお前が鼻血を出しているところも青痣を顔に作ってるところも見ているんだぞ?」

 稽古では、俺は手加減を一切しない。女だろうと子供だろうと同じだ。
 U.S.S.は生半可な覚悟と実力では生き残れない特殊部隊。甘やかしはその者の命を脅かす要因となる。
 ○○に対しても徹底的に厳しい訓練を課した。毎回の流血は当たり前で、骨折・脱臼も挙げれば相当の数になるはずだ。
 痛みに耐える彼女は、呻き声をあげることはあっても弱音を吐くことは一切無かった。他の奴なら二度目の訓練を逃げ出すのに(例外にベクターという日本人がいる)。

「うう…そ、そんなこと今言わなくても…」

 頭の中では流血し、頬が腫れた己の顔でも思い返してるのだろう。
 羞恥で身体を縮こませながら俯いている。

「だから恥ずかしがるなと言っている。そんなお前を見ていながらも、欲しくて堪らないのは俺なんだぞ」

 鼻血を垂れ流そうが顔が腫れてようが、そんなもの関係ない。外見で恋人を選ぶような阿呆共とは違う。
 それに、ひたむきに努力する○○だから惹かれたんだ。辛い過去があっただろうに、めげず、必死についてこようとする姿勢を持つからこそ。
 だからこそ愛しいと想うのだから。

「俺はお前の全てが見たい。そして、俺の全ても知って欲しい」
「ハンクの…全て?」
「ああ。…お前が欲しくて、抱きたくて堪らない、只の男だということをな」

 冷静な仮面を貼り付けた師匠としての俺ではなく。恋人としての俺を見て欲しい。
 首筋に唇を寄せ、軽く吸ってやれば赤いキスマークが刻まれた。
 すかさず手で胸に触れ、優しく揉む。小さく喘ぐ○○の声が心地よく、手に収まる感触も何ともいえなかった。
 ○○の乳首を含み、舌で愛撫してやれば俺のシャツをぎゅっと掴んで反応を示してくる。『嫌』とは一言も言ってないから、不快感は無さそうだ。

「んん…っ、ふ、あ…っ」

 涙を目尻に溜めながらも、施される愛撫に身を震わせる○○。
 その姿がどれだけ雄の本性を刺激するかなど、ちっとも分かっていないだろうな…。
 心から愛しくて堪らない女を、その手の快楽など何も知らぬ女を気持ち良くさせているのが自分なのだと思うと非常に気分が良かった。
 中心部…性器が徐々に屹立しているのがズボンの中でも十分に分かるほど、俺は興奮していた。勿論、恐がらせるのはアレなので表情にはあまり出さないように務めるが。

「下、脱がすぞ」

 顔を見られたくないらしい○○が枕を引き寄せ、微妙に隠しながらも『…うん』と承諾してくれた。
 スカートのジッパーを下ろせば、中から水色の清楚なデザインの下着が現れた。

「ふふ…可愛らしいな」
「え…?」
「下着だ。さっき上を脱がせた時も思ったが…こんなデザイン、街で売っているのか?」

 前戯中に会話など必要ないと思われるかもしれないが、俺は○○と話していたかった。
 彼女のことを知りたいし、何より緊張しているだろう○○の力を抜いてやりたいと思ったから。

「…あの、フォーアイズ…チームメイトに教えてもらったんです。彼女も、派手なものは好きじゃないので…」
「そうか。下着を褒めるのは可笑しいかもしれないが、…お前にぴったりだと思うぞ」

 国民性なのかは知らんが、アメリカでは女性向けの下着も派手なデザインが多い。かつて身体だけの関係を持った女も居たが、皆派手だった。
 まぁ肉欲を満たすだけの間柄なので何も言うことは無かったが。

「…ふふっ」
「?…どうした?」
「だって…ハンクが可愛いって言ってくれたの初めてだったから…それが下着のことって考えたら、…ふふふっ」
「…そうだな。初めて可愛いと褒めたのが下着では、笑ってしまうか」

 私服を着ているお前も、髪を下ろしているお前を見ても、俺は何も言っていなかったのだろう。
 ○○の傍に居るだけで満たされてしまうからな。その一言に尽きる。

「さて、その余裕もどこまで持つかな?」
「え…っ!?ぁあんっ!」

 スカートと下着を脱がし、指で秘所に触れてやればクチュリと水音が聞こえた。
 受け入れられる状態ではないものの、確実に感じてくれている証拠だ。

「うう…んっ」
「我慢しないで声を出せ。そのほうが楽だ」
「で、も…っ!は、恥ずかしいです…」

 外に聞こえてしまうのを心配してるのだろうか。

「俺の部屋は他の隊員と造りが違う。風呂場で同じことをしても聞こえないぞ」

 U.S.S.隊員達は畏怖の念を込めて俺のことを『死神』呼ぶが、アンブレラ社幹部にとっては非常に使い勝手の良い駒である。
 そのため部屋の造りは少し上等で、特別に入室許可の出ているエリアも多い。信頼度の高さはこんなところでも差が出てくるのだ。
 防音設備が整ってる訳ではないが、発砲音と比べれば喘ぎ声など比べるに足らない。そう言ってやれば○○も少し安心したようだった。

「ちゃんと…慣らさないとな」

 初めて男を受け入れるその部位は、まだ堅く閉じている状態だ。
 指で。唇で。全ての所作に気持ちを込めて触れてやらねばならない。なるべく痛みを最小限に抑えてやりたい。
 初めて男に抱かれるという思い出が○○にとって良いものとして残るように。
 出来得る限り優しく。不安など溶かしてしまうように。

「んっ…ぁ、はあ…っ」
「…○○。気持ち悪くないか?」
「…は、はい…大丈夫です…何と言うか…気持ち良いんだと、思います…っ」

 濡れ具合からも彼女が快感を得ていることは分かる。
 だが、初めて知る感覚を何と言い表せばいいのか分からないのだろう。その表情を眺めて、俺は小さく笑いを零した。
 全く…愛らしいな。

「な、何です?んっ…笑ったり、して…」
「いや…お前が可愛いと思っただけだ」

 らしくないな。こんなことを俺が言うなんて。
 だが、我慢できなかった。とにかく胸の中で思っていることを伝えたかった。
 お前が可愛いくて、甘やかしたくて仕方が無い。
 殺伐としたこの生活の中で、お前と出会えて良かったと心の底から思える。
 U.S.S.という非日常な世界。一般人が入り込めば二度と出てこれないこの闇の世界で巡り合えた奇跡。
 その存在を信じてなどいない神にさえ、感謝の意を表したくなるほどだ。

「ん…あっ、…は、ハンク…っ」
「そうだ…それでいい。もっと俺を感じてくれ…」

 出し入れするだけではなく、愛液に濡れた指でクリトリスにも触れる。
 いきなり襲った感覚に驚いた○○が、高らかに声を出した。

「きゃあっ!…い、や…っ!な、何!?」
「大丈夫だ落ち着け…ここに触れただけだ」
「あんっ!いや、そこ…触らないで…触らないでください…っ!」
「…こんなに濡れてるのにか?」

 明らかに増えた愛液の量。それは○○が快感を得ているからこその現象だ。
 気持ち悪い訳が無いのだ。今はまだ慣れていないだけ。そのうち、擦られるのが堪らなく好きになるだろう。
 ○○は身体にぎゅっと力を入れて抵抗を示すが、秘所は更に水音が増してシーツをぐっしょりと濡らしていた。

「ぁああっ!はんく、ハンク…っ」

 そうだ。もっと呼んでくれ。
 その声があれば、俺は何処にいても俺のままで居られる。
 どんなに血で汚れようとも、死神と恐れられ罵られようと…お前を愛する只の男で居られる。

「○○…お前を、感じさせてくれ…」

 男根を受け入れるのは問題ないだろう。その機会が熟したのを静かに感じ取った俺はワイシャツとズボン、そして下着を脱ぎ払った。初めて直視した男の肉体に○○は目を逸らす。
 恥ずかしいのは分かるが、その行動は頂けないな。俺は○○の顎を優しく掴み、真正面を向くよう促した。

「んむっ!?」
「ちゃんと俺を見ろ。お前を…初めて抱く男だ」

 ○○の視界に入るのは俺の顔だけではない。胸、腹、そして…堅くそそり立った男根。
 真っ赤に頬を染めながらも俺の言うことをしっかりと聞いて、目を逸らさないように務める○○。
 健気だな…と思っていたら、目の前の恋人はいきなり涙を流し始めた。

「!?…おい、どうした?」
「す、すいません…その、ちょっと恐くて…あ、ハンクが恐いんじゃないんです!えっと…行為が、恐いというか…」

 泣くのを止めようとするが、一度流れたものはすぐに収まらない。
 俺は『よしよし』と言いながら彼女の頭を撫で、唇でその涙を拭ってやった。

「その…い、痛いんですよね?」
「…まぁ、なるべく痛くないように心がけたいが…」

 初めての性行為で痛みを感じない女も…もしかしたら居るかもしれない。とはいえ稀だろう。
 狭い膣内に、期待に昂ぶり、張り詰めた男根が挿入されるのだ。無痛でというのは少々厳しいかもというのが正直なところだ。
 今、彼女の心の中は不安一色に違いない。性行為時と訓練・任務時の苦痛では質が全く異なる。
 身体の表皮に負う傷の痛みは嫌というほど理解しているだろう。
 しかし、膣内…体内の柔らかな部位に負う痛みは未知の領域。これから襲う苦痛が恐いのは当然のことといえる。

「痛くないと言えば嘘になるかもしれない。だが…俺を信じてほしい」

 ○○を見つめながら言った。
 なるべく負担を掛けないよう抱く。それは俺もずっと考えていたこと。
 
「…はい。恐いけど…でも、我慢します」
「…その気持ちは嬉しいが、痛い時は言ってくれ。無理やりというのは好かん」
「勿論です。でも…私、抱いてほしいです。…ハンクの気持ち、ちゃんと分かってますから」

 弟子に厳しく教育を施す師匠は、実は誰よりも自分のことを気にかけてくれる人だった。
 最初はただ『厳しい教官』だと思っていた。だが長い時間一緒に居れば、それだけの人ではないというのが分かる。
 未熟な自分のことを見捨てずに、可能性を信じ、鍛えてくれた。
 師としての慕情はいつの間にか異性へ向けるものと変化を遂げ、そして成就した恋。
 もう、こんな人とは二度と出逢えないだろうと○○は言う。

「ハンクが初めての人で嬉しいです」
「○○…俺もだ。お前とこうして一緒になれて、嬉しく思う」

 俺は姿勢を屈め、○○の秘所に男根を宛がった。
 愛液が先の部分を濡らす。その微かな感触すら、今の俺には快感だった。

「んっ…」
「出来るだけ…力は抜くんだ。俺の背中に爪を立ててもいいからな」
「は、はい…」

 ゆっくり、ゆっくり腰を進めてやる。
 膣内の抵抗を感じたが、十分に濡らしてやったお陰で心配していたほどの拒否感は無い。
 膣壁が男根を締め付けて、もっと奥へとでもいうように誘ってくる。だが、その誘惑には乗らない。
 今、俺の下で横たわる○○は静かに呼吸をしながらも下半身の違和感と必死に戦っている。その瞳はきゅっと閉じられ、少しでも痛みを飛ばすよう意識を集中させているのが分かる。
 背中に立てられた爪の痛みが俺を襲うが、彼女が感じている痛みに比べれば大したことは無い。もっと食い込ませて、背中が血で真っ赤になったっていい。
 それで○○の快楽が高まるというなら本望というものだ。

「ん…はぁ、はあ…ぜ、全部…入りましたよね…?」
「ああ。よく頑張ったな」

 ようやく男根が根元まで納まった。お互いの、他人には決して見せられない部分を密着させている。
 何度も行ってきた行為だが、○○としているのだと思えば神聖なものに感じた。
 本当に、今日の俺はどうかしているぞ。何故こんなにも変わってしまった?
 もう、前の死神ではいられない…。

「ハンク、動いてください…私、ハンクに気持ち良くなってほしいです」
「○○…っ」
「お願いです。ハンク…動いて…?」

 もう少し休ませてやりたかった。
 無理をしているのは分かる。全て受け入れられたといっても、膣内はまだ男根を包み込んでいるだけだ。
 果たして律動に耐えられるのだろうか…俺が迷っている様子を見て、○○は微笑む。
 笑ってくれてもいい。その時の彼女が聖母のように思えたんだ。

「ハンクが欲しい。あなたを…か、感じたいんです…」

 恥ずかしがり屋の○○がそんなことを言うとは思ってもみなかった。
 ここまで言わせておいて何もしないというのは男が廃る。
 その覚悟をしっかり受け止めた俺は耳元で『ありがとう』と囁き、ゆっくりと腰を動かし始めた。

「あっ、あっ!…んっ!」
「はあっ…はあっ…」

 腰を打ち付けるたびに肉体がぶつかり合う音が室内に響く。弾け飛んだ愛液が互いの腿とシーツを濡らした。
 最初は痛みに耐えていた○○も、俺の質量に慣れたようだ。身体は無意識だろうが、負担を緩和させるために脚をよく開いてくれている。
 そのお陰で俺は更に深く腰を埋めることが出来て、強い快楽を得ることが出来た。

「はあっ…どうだ?○○…」

 今の状態の彼女から、どんな言葉が聞けるのか。
 俺はちょっとした気持ちで尋ねてみた。

「あっ!…ああっ、や、耳元で…言わないでぇっ」
「ん?」
「んん…こ、声で…ハンクの声、かっこいいから…あ、おかしくなっちゃう…っ!ふあぁっ」

 ぎゅううと締め付けられる男根。射精にはまだ足りないが、眉間に皺を寄せて耐えた。
 俺が耳元で何か言った時に膣内は蠕動していたように思ったが、気のせいではなかったのか。
 彼女の言葉に、口の端が上がるのを感じた。
 こいつは俺の声だけでも感じてくれている。

「はは。嬉しいことを…くっ、…言ってくれる」

 耳に口付けを落とし、更に律動を早めた。
 そろそろ○○がイキそうな雰囲気だ。俺もかなり興奮しているから、いつもより早い射精を迎えそうだった。
 俺の腕の中で喘ぎ、乱れる○○。何度頭の中で描いた姿だろう。
 今は只、この時間に浸っていたい。しかし必ず終わりは訪れるというもの。

「あっ!ああっ!…ハンク、私、もう…」
「…もう、何だ?」
「きゃああっ!駄目、もう駄目、なんです…っ」

 小さく震えだした○○。後ほんの少し律動を早めてやれば、すぐイけるだろう。
 ラストスパートだ…俺は目の前の彼女を抱きしめた。

「○○、○○…っ!」

 一往復ごとに愛情が高まっていく。
 受け止めてくれ。俺の愛も、何もかも!

「ああっ!ハンクっ!!」
「大丈夫だ。…くっ、一緒に、イこう…っ!」

 ひたすら絡み合い、余すところ無く互いの気持ちと身体をぶつけあった。







 結局、その後に二回も抱いてしまった。
 すっかり体力を消耗した○○は、俺の腕枕ですやすやと眠っている。
 お前はそんな顔で眠るんだな。
 これからも、色々なお前を見ることが出来るのだろうか…。

「ん…ま、…マスター…」
「…夢の中では鍛錬中か?」

 訓練中は俺のことを名前ではなくマスターと呼ぶ○○。
 どうやら夢の中ではCQCの真っ最中らしい。手を時折ぎゅっと握ったり、眉間に皺を寄せたりしている。
 微笑ましい光景だ。

「許される限り…こうしていたいものだな」

 幸せな時間は永遠には続かない。
 明日は休日だが明後日から俺はロックフォード島、○○は任務のためスペインに向かう。
 彼女の任務は実験体の輸送ならびにライバル会社の情報収集だ。戦闘も十分考えられると上層部から聞いている。
 どうか無事で戻ってきて欲しい。
 数え切れぬほど実験体や人間を任務で殺めてきた俺。自分勝手だとは分かっているが、恋人には無傷で生還してほしいと願う。

「…愛、か」

 そんなモノ必要ないと思っていた。そんな感情を抱いてしまえば、いずれ任務に支障をきたすかもしれないと。
 だが、知ってしまえばもう遅い。拒んでいた頃になど戻れやしない。
 お前という存在を知り、手に入れてしまった今。手離すことなど出来ないんだ。

「○○…お前を愛している」

 横たわる○○の額にキスをして、俺は心地よい眠気に身を任せていった。



END.


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