イイング救出大作戦! ver.スペクター

 『チン』と言う警戒な音がして、目の前の扉がゆっくりと左右に開く。朝の3時半を過ぎた夏の空は、夜明けに向けて少し明るくなっていた。ヘリポート、その中央に大きな塊のような黒い物が見える。

 そして―。

「スペクター!!!」

 ヘリコプターから降りて待っている人影が見える。駆け寄ったその瞬間、すごい力で腕を引っ張られた。そして、何やら温もりを感じる狭い場所へ・・・。自分の鼓動は煩い程だった。

「・・・好きだ・・・」

 心地よいスペクターの体温と声。

「・・・私も・・・助けてくれて・・・ありがとう」

「当たり前のことだ」

 スペクターは抱きしめていた腕を緩めると、○○の防毒マスクをそっと外す。

「ねぇ、みんなはどうしてるの?」

「他の奴らは先に戻って準備してる。パーティーのな。最初はみんなして助けに来るってなって大変だったんだ」

「そうなんだ・・・よかったぁ・・・」

 ○○の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

「みんなに・・・スペクターに見捨てられたかと思ってたよ・・・」

「そんな訳あるか」

「ん。所で、何のパーティーなの?」

「ん?お前の生還パーティー、それから・・・」

 スペクターは○○をぐっと引き寄せ、顎にそっと触れる。

 少しの間の後、ゆっくりと唇が離れて行った。

「俺の恋愛成就おめでとうパーティー」

「え?」

「ずっとお前が好きだった」




 ―帰りのヘリコプターの中

「ねぇ、スペクター・・・ちょっと失礼な質問になっちゃうんだけど・・・」

「何だ?」

「スペクターはさっき、『私のことをずっと好きだった』って言ってくれたけど、あの・・・何時間か前のタイラント戦で・・・その・・・ああなったから・・・私のことを好きな気になっちゃってるんじゃ・・・」

 ○○はタイラント戦でのできごとを思い出して顔を真っ赤にした。

「あれで好きになるってどんだけだよ・・・。物事を正しく表現するなら、『もっと』好きになったって言った方が正しいかもな」

 そう言って、スペクターは笑う。

「んまぁ、パーティーの後には、お前の本物の尻を見るんだから、タイラント戦のあのできごとがあってもなくても同じだろう?」

「うそ!?何それ!?私、スペクターと・・・えぇと・・・そういうことしちゃう・・・訳・・・!?」

 恐る恐る○○は訊いた。

「俺はそういうつもりだけど。それにさっき俺が告白した時『私も』って言ったし、『スペクターに見捨てられたかと思ってたよ』って返しから、オーケーってことだと解釈してたけど」

 スペクターは横目で○○をちらりと見つめた。

「違うのか?」

 ○○は口を開きかけた。

「違うのなら、ここから突き落とすが」

 言おうとした○○の言葉を、スペクターが遮り、笑う。

「違わないよ!いつもこうやって冗談交じりに接してくれて大好きだし・・・U.B.C.Sの建物で目が覚めた時も、スペクターが来てくれたらなってずっと思ってた。ガンタレットで書いてくれた『ちゃんと見てる』ってすごく嬉しかった・・・!!」

 ○○はスペクターに笑いかけた。

「だから、違わないよ」

 二人はどちらからともなく顔を寄せると、静かに唇を合わせた。

 少しずつ見え始めた朝日が、二人を優しく照らしていた。

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