イイング救出大作戦! ver.スペクター

 そして今、なぜ自分がこのような建物の中に居るのだろうか。確か自分は路地で気を失ったはず。恐らく、敵が何らかの目的のために自分をここへ運んだのだろう。少しだけ幸いなのは、ベッドに寝かされていたためか、体力が少しだけ回復し、「ほぼダイイング状態」であることだった。しかし、その身体はふらふらとして今にも倒れそうだった。

 少し歩くと、横一直線に赤く光る筋が見えてきた。その筋は床から天井までの間に8つある。

「レーザー・・・」

 床と最初のレーザーまでの距離を見ても、自分の身体の幅ギリギリくらいである。防弾チョッキを脱げば通れるかもしれないが、脱いだ所を敵に撃たれたら一溜りもない。しかし、このレーザーを通らなければ、ここから先へは進めない。

 ふぅ、と息を吐きだすと、○○は防弾チョッキに手を掛けた。すると、目の前で光っていたレーザーが突然全て消えた。

「なっ、何・・・!?」

 ○○は驚いたように辺りを見渡した。しかし、人影は全く見当たらない。

「進めってことなの・・・・・・!?」

 ○○は恐る恐る踏み出した。




 次のフロアに進むと、何かが沢山床にあるのが見えた。何かと思って近付けば、床にあるものは全て敵の人間だった。

「はっ・・・!U.B.C.S!」

 敵の戦闘服にはU.B.C.Sの文字が。横たわる敵の首に手を当てれば、脈は既に止まっていた。

「一体誰が・・・」

 片膝を立ててしゃがみ、辺りを警戒しながら、○○は敵の武器と弾薬を回収していく。

「さっきのレーザーに、この死体たち・・・誰かに監視されてるのかも・・・」

 でも、もし敵に監視されてるとして、こんなことをするくらいなら、最初からトラップとか兵士なんか配置しなければいいのに・・・。

 ○○はふと、すぐ傍の曲がり角に付いているカメラを見つめる。すると、○○を見下ろすように、カメラは下を向いた。

「やっぱり監視されてるか・・・」

 『もしかしたらスペクターかな?』などという考えも頭に浮かんだ。彼ならば遠隔操作でこれくらいのことは容易いからである。それに、実を言うと、○○は密かにスペクターが好きだった。好きな人に助けてもらいたいと思うのは、例えU.S.S.の兵士でもしょうがない感情なのだ。しかし今、監視している者が彼かどうかを確かめる術もない。第一、彼はそんなことをして助けようとしてくれるだろうか。

 ○○はカメラを睨みつけると、下のフロアへ向かった。




 下のフロアに入るとすぐ、敵と出くわした。○○は急いで銃を向けるが、ほぼダイイング状態のために、身体が思うように動かない。

 その時だった。

 敵の目・鼻、そして耳から血が溢れ出した。

「うわっ!!!」

 突然のことに、○○はびっくりして銃を落としてしまう。

「何これ!?どういうこと!?」

 敵は苦しそうにもがくと、その場に倒れた。脈はなかった。

 これで、何者かに監視され、何らかの手が加えられていることが明確になった。誘導し、殺しやすい場所で殺そうとしているのだ。そうとわかれば、監視を断ち切るのが正解だ。

 ○○は静かにハンドガンを天井のカメラに向ける。すると、引き金を引こうとしたその瞬間、自分の足元でものすごい音がした。

 何事かと足元を見れば、すぐ傍の床には無数の穴が開いていた。足元だけではなく、今もその穴は開け続けられ、壁に到達した。自分のすぐ後ろの天井を振り向けば、そこにはガンタレットが設置してあったのだ。こうしている間に壁には何やら文字のような物が・・・。

「えぇと・・・『カメラを打つなバカ』・・・?」

 ○○は訝しげに眉を寄せる。

「『ちゃんと・・・お前を・・・見てる』・・・あぁん??」

 何・・・これ・・・。はっ!もしかして!!!

「もしかして、スペクター!?」

 ○○のその言葉に、ガンタレットはは止まる。そして、人が返事をするように、上下に頷くように動いた。

 しかし、敵が監視していていいように返事をしているだけかもしれない。

「スペクターだって言う証拠はあるの!?」

 すると、ガンタレットは再び動き出す。

「何々・・・?『お前の・・・尻は・・・』!?!?ちょっと!!!わかったから!!もう止めて!!!!!!」

 監視カメラとガンタレットを交互に睨みつけ、文句を言いたげに、カメラに銃を向ける○○。

「で?私はこれからどこへ向かえばいい?」

 ガンタレットは動き、きれいな壁に文字を作る。ガンタレットを動かして文字を書くなど絶対に難しいのに、更に難しく苦労するような長い文章が書き出された。

 ―『ヘリポートに向かえ。ヘリで迎えに行くから。ここからヘリポートまでの敵は全て排除した。だから安心してエレベーターで行け。ちゃんと見てるから』

「わかった」

 カメラの相手がスペクターだとわかり、不安は徐々に消えていく。彼の『ちゃんと見てるから』の言葉に、酷く安心した自分が居た。

 ○○はカメラに向けた銃を下ろすと、廊下の奥にあるエレベーターへ顔を向けた。

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