イイング救出大作戦! ver.スペクター

 時間を遡ること2時間前―。

 ラクーンシティにある、廃工場に偽装されたアンブレラの地下研究所でのことだった。B.O.W.であるタイラントが現れたのだ。

 タイラントが現れてすぐに、隊長であるルポがスーパーソルジャーを使おうとした。そこまではよい。その後からが問題だったのだ。ルポが「スーパーソルジャー!!!」の掛け声と同時に両腕でマッスルポーズを作ったのめ、すぐ傍に居た○○はその拳でアッパーを思い切り食らってしまった。(もちろんルポは気付いていない)その時の顎にかかるダメージ・・・。

 上下の歯が、皹が入る・折れる・抜けるのどれかに該当するのではないかと思う程の痛みと不安を我慢しながら、○○はマシンガンを構える。すると自分の背後から何者かに突き飛ばされてしまった。地面に手をつきながら振り返れば、そこにはゾンビの姿しかなかった。しかし直後、○○の背中に、移動する痛みと重みが走った。身体を支えていた両手と両膝は見えない何かによって崩されてしまう。その見えない何かは、ACTカモフラージュを使ったベクターだった!ベクターは後ろに下がりながら攻撃をしているらしい。○○の背中の上を踵からゆっくりと移動して行くのだ。その戦闘用ブーツの踵が背中にめり込むの何の。痛いの何の。それだけではない。どうやら体術も使っているらしく、後ろ回し蹴りをした時なんかは最悪である。軸足はベクターの体重が背中の一点にかかるし、回転方向に合わせて動くので、その部分がぐりぐりと抉られるようである。そして、蹴り終わった後の両足なんかは、ジャンプした後の着地に似たような感じになるので、背中も腹部にも負荷がかかり、臓物が口から出るのではないかという程である。(もちろんベクターは気付いていない)この時の、首から下と背中と腹部にかかるダメージ。

 よろよろと立ち上がった時に、これまた良くないことが起こる。ベルトウェイのスティッキーボムが爆発し、その爆風で吹っ飛ばされる。(もちろんベルトウェイは気付いていない)壁や床ではない何か硬い物に全身を強打したかと思えば、その硬い物はタイラントの背中だった。怒るタイラントに頭を鷲掴みされ持ち上げられる。頭はメリメリと軋み、頭蓋骨が一気に砕け散り目玉が飛び出るのではないかと思う程の痛みだった。この時の、全身強打と、頭部へのダメージ。

 頭を掴まれ宙に浮いたまま、視界の端に注射器のような物が見えた。それはタイラントの腕に刺さっているようだった。その時、浮いたままの身体が大きく揺れたかと思えば、頭を掴む力が一気に弱められる。そう、○○はまた投げ飛ばされたのだ。投げ飛ばされる寸前、自分の肩に何か針のような物が刺さった感覚があった。これはきっと、バーサのアンチペインショットに違いなかった。この時ばかりはダメージが軽減された気がした。

 投げ飛ばされ、宙をすごい速さで舞いながら、「バーサにアンチペインショットしてもらったから平気だもんね」などと考えていた○○を更なる悲劇が襲う。何と、高速浮遊舞の終着点はスペクターの上だった。しかも彼の顔の上。はっきりと言おう、スペクターの顔の上に○○の尻。その尻の大事な所、正にその部分しか指さないその場所には、彼の防毒マスクの飛び出た眼元が突き刺さっていた。あまりのショックに言葉が出ない○○。そして、アンチペインショットによりダメージが軽減されるどころか、寧ろとんでもなく痛い。この時の、尻の大事な部分にかかるダメージと、「自分の尻の下に男の顔がある」という、若い女にはショックすぎる状態による精神的ダメージ。

 現時点で体力ゲージは既に赤を迎えていた。しかし、ここは戦場である。このまま動けなければ、迎える物は「死」だった。

 力を振り絞り、○○は錆付いたロボットのようにして顔を動かし、目の前の死闘に眼を向ける。しかし、飛び込んできた光景に絶句した。何と、タイラントがこちらに向かって突進して来るではないか。当然、○○は体当たりを受け吹っ飛ばされる。そして、自分の尻に刺さっていた物が勢いよく無理やり抜けた痛みも伴った。この時の体当たりのダメージと尻のダメージ。

 チカチカする視界の中ふらふらと立ち上がれば、目の前には再びタイラントが居て、両手に作られた拳を一気に振り下ろされる。やっとのことで立ち上がったのも空しく、○○はすぐに地面に叩きつけられた。この時の全身のダメージ。

 気になることが○○にはあった。なぜタイラントは自分のことばかりを狙うのか。そして、先程のバーサのアンチペインショットの効果が全然表れていないのではないか。このことを考えている間も、○○はタイラントに殴られ続ける。・・・自分ばかりが狙われるのも、アンチペインショットの効果がないのも当たり前だった。タイラントに狙われるようにされてしまったからである。しかも仲間に。そう、バーサのアンチペインショットだと思っていた物は実は、フォーアイズが放ったコントロールエネミーだったのだ。つい少し前、○○がタイラントに頭を鷲掴みされた時に見えた、タイラントの腕に刺さっていた注射器は、敵を操るための注射で、続いて○○が感じた、自分の肩の針のような感覚は、攻撃対象に撃つはずの注射だったのである。そう、フォーアイズが照準を誤ったのだった。(フォーアイズは少しも気付いていない)この時の、疑問が解決したことによって得た、今までの何倍もの精神的ダメージ。

 ○○は遂に、ダイイング状態を迎えた。

 そして終焉―。

 何度目かわからぬタイラントのタックルに、○○の身体はフェンスを突き破り、どこかの暗い路地へと消えた。

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