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 ”濡れますから・・・止むまでどこか入りますか?”、そう言ったのは自分だが、大切なことを忘れていた。

「あのぉ・・・」

 男二人を相手にする技量など、○○には備わってなかった。と言うよりも、一人の男の相手が務まったことがあるかどうかも怪しいところだ。しかし、心の中ではどちらに対しても想いがあり、『こういう大人の男の人とお付き合いしたいな・・・』なんて漠然と思っているから厄介だ。その想いがどういう想いなのか定まっていないというのに。

「あ・・・」

 何と言って話題を切り出そうか迷っている内に、○○の視線はふとローンウルフの指先へと落ちた。

「―ローンウルフさんの手って、すごく綺麗ですね―!」

 細くて長い指。そして、しなやかに動く。

 ローンウルフは苦笑した。

「あぁ、よく言われるんだよそれ。でも、何だか力がなさそうに見えてな。自分ではあんまり好きじゃないんだけど―」

「そんなっ!すごく綺麗で羨ましいですっ!!」

 言葉を遮るように○○は口を開くと彼の指先を追った。

 ローンウルフの指先は、コーヒーの入ったカップの縁をなぞるようにして触れていた。

 わぁ・・・!いいなぁ!綺麗な手・・・!!

 そんな、ただ単純な「羨ましい」という感情。しかし、それと同時に邪な感情が生まれた。

 ソノテデフレラレタイ。

 つい○○は、彼の指先が自分の身体の曲線に合わせて動くのを想像してしまう。

 う・・・!ダメだよこんなこと考えるなんてっ!!

 そう心の中で自分に言い聞かせても、そういう感情はなかなかには消え去ってくれない物。それどころか、増してくるようである。

 いけないと思いつつも、○○は反対側に座るエージェントの指先に目を移した。

「―エージェントさんの手は、大きくてがっしりしてるんですね―」

 ローンウルフとは対照的な手だった。ゴツゴツとして骨ばった指。

 そしてまた、邪な感情が生まれる。

 ソノテデイッパイニサレタイ。

 ○○はつい、挿入前の手での愛撫を想像してしまう。

 自分は手フェチではない。ただもう、想像が止まらなかった。同じように体格のよい男。それでも手の作りは対照的。いったいどんな触れ方、撫で方・・・抱き方をするのだろうか。

「雨・・・止んだみたいだな」

「そうだな・・・出るか」

 男二人の声に、○○ははっと我に返る。

 この時、ローンウルフとエージェントが密かに微笑んだのを、○○は知らなかった。

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