べっとりと濃厚なキス
「どういう意味なの?」
「だから―」
だんだんと顔を赤くするマルコ。
「かっ・・・軽いキスだと!的を狙うのが大変なのっ!!!」
「的ぉ!?」
マルコの言う“的”の意味がわからないので、○○の顔は更に不満になっていく。
「○○の唇だよぉ!」
茹でダコのように真っ赤なマルコ。その顔のままで、もうどうにでもなれとマルコは続ける。
「軽いキスって、触れ合うのはほんの一瞬だろ!?、そのほんのちょっとが難しいの!!」
「・・・む、難しいの?それって・・・今までの方がよっぽど難しいような・・・」
○○は今までのマルコのキス、一般に言う「ディープキス」を思い浮かべる。
「難しいだろう!!どんな口してすればいいんだよ、軽いキスなんて!!」
「だから、いつもみたいにあんなにべっとりする前に、唇が触れたらすぐにやめればいいじゃん」
「やだっ!!そんなんじゃ俺、タコみたいな口になる絶対!!それに!激しいのが好きなんだよ俺は!!それにそれにそれに!!!唇が触れたらもう放さないのが俺のポリシーなんだよぉ!!!」
頬を両手で押さえ、自己主張しながらムンクの『叫び』のような顔をするマルコ。
○○も○○で、マルコがイラストのタコのような口をして自分に迫るのを想像してげんなりした。そういえば、先程マルコに軽いキスを頼んだ時、なかなか唇の感触がないから目を開けたのだが、そこには自分の唇を尖らせるようにして突き出し、○○の唇のすぐ正面でぶるぶると震えるマルコが居た。それは、つい今彼が言った「タコ」のようであった。マルコは自分がもう既にタコのようになっていたことに気付いていないのだ。
彼氏がタコ・・・タコでキスを迫る・・・タコチュー・・・!?
「わかったよマルコ・・・今までのキスのままでいいよ」
○○はげんなり顔を濃くして、しぶしぶ声を発した。
「えっ!!いいの!?」
「しょうがないでしょ!軽いのできないん―うぷ!」
しゃべってる途中で、マルコが勢いよく唇を押しつけてきた。○○は、そういうムードの時には決して上げてはならない声を上げてしまう。
「おっぷ・・・ぶぇ・・・」
そういうムードの時・・・いや、実際にしてる時にも決して上げてはならない声を、○○は連発する。
「はぁ・・・○○っ・・・やっぱり俺、このキスが・・・この○○とのキスが好きだ・・・」
「わかっ・・たか・ら・・・ぐぷっ・・・」
二人の口からはどちらの物がわからない唾液が顎を伝って垂れていく。
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