べっとり濃厚キス

 夕飯も落ち着いた夜の9時。リビングでは、テレビから発せられる賑やかな声とは不釣り合いな男女の声が響いていた。大人の男と女の濃厚な吐息が・・・。

「あっ・・・マルコ・・・っ・・・」

「・・・ん・・・?色っぽい声出すなぁ、○○は・・・」

「んんっ!・・・マルッ、ふっ・・・はぁ・・・」

 何度も絡められる舌。漏れる吐息。○○が苦しそうに彼の名を呼べば、その彼は更に欲するように○○を自分の膝の上へと引き寄せた。

「○○っ・・・」

「はぁっ・・・マルコ・・・んっ・・・」

 角度を変えながら、口付けはだんだん激しさを増し、どちらの物かわからない唾液が顎を伝って垂れていく。

「はっ・・・○○っ・・・」

 熱を帯びたマルコの声。彼の手は○○の腰から上へと移動する。

「マルコッ・・・!!!」

 ○○は焦ったような声を漏らす。

 だめ・・・もう我慢できない・・・。

「マルコッ!!!」

 ○○は胸の下にやって来た彼の手を掴むと勢いよく遠ざけ、全力疾走した後のように肩で息をする。顔は真っ赤で、眼には涙を浮かべている。

「どうしたんだ?○○」

 突然のことに、マルコは握られた自分の両手と○○を交互に見て首を傾げるが、しかし、その顔は至極満足で嬉しそうである。

「“どうした”じゃないよ〜!!!苦しいよ〜!!!」

 息の整わない○○は、はぁはぁしながら頬を膨らませる。

「それに・・・」

 ○○はずっとマルコに訊きたいことがあった。

「それに?」

 きょとんとした顔のマルコ。

「何でマルコっていつもそんなに激しいキスするの!?見てよ!!」

 ○○は自分の口の周りを恥ずかしそうに指差した。口の周りから顎にかけて、自分たちの唾液でいっぱいだった。無論、マルコのそこも同じように唾液で光っている。

「べとべとだよぉ〜・・・」

 ○○は困ったような顔をし、テーブルの上にあるティッシュボックスに手を伸ばした。

 マルコとのキスはいつもこうなのだ。軽く唇と唇を重ね合うというキスはなく、いつも濃厚で激しく、そして深い物なのだ。そして、口の周りはその度にべとべと。

「ねぇ、何でいつも激しいの!?マルコ?」


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