私のが終わる時

「あっ・・・痛っ・・・!!!」

 冷たい壁を背中に感じながら、○○はぐらぐらと揺れる視界で天井を見つめた。

 つい先程まではヘリコプターを操縦していた○○。仲間を迎えに行くための出動だった。しかし、何物かによって放たれたロケットランチャーをテール部分にくらってしまった。墜落寸前にパラシュートで脱出したものの、飛んできた破片で太腿に酷い傷を作ってしまい、着地もろくにできず、その後に歩くこともできず、どこかの倉庫に這って逃げ込んで今に至る。

 ぱっくりと割れた太腿の傷口に、全身強打。少しでも動かすと拡大する痛みに、○○は顔をしかめた。

 今頃は別の隊員が仲間を迎えに行っている。作戦の成功を最も大事とするU.S.S.はわざわざこのような状況に陥っている人間を助けたりはしない。それに、全員どこかに出動していて、○○を助ける人も時間も暇もない。

「ここで・・・終わり・・・」

 残された道はただ一つ。自分が終わる瞬間を嫌でも想像してしまう。

「何でロケランでテールなんか撃たれるかなぁ・・・」

 あの時、避けきれなかった自分。天井に所々ある染みを見つめながら、今更ながら反省の言葉を呟いてみる。

 しかし、一番の反省は・・・

「好きって・・・言えばよかったな・・・」

 もっとあの人に相応しくなったら想いを告げようと思っていた。絶対にあの人は生還すると信じていたから、一緒に過ごすことができて、自分も成長する時間などは無限にあると信じていた。

「もっと一緒に居たかったな・・・」

 でも、戦場では「絶対」はない。戦場ではなくても生きて絶対に帰る保障はない。「絶対」はない。

 そのことを忘れていた訳ではない。

「ウルフ、先輩っ・・・」

 あの人のように、自分も絶対に生還する。そう強く心に決めていた。

「先輩にっ・・・会いたいよぅ・・・っ・・・く・・・」

 知らない場所。どんどん出血してくる自分の脚。

 ○○の瞳からは涙が溢れた。
 

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