HAND

 冬の街並みをハンクと歩く。それだけで、○○は嬉しかった。しかし!手が寒い!外に出すのが嫌で、ずっとポケットの中に突っ込んでいた自分の手。それでも温かくならず、どうしようかと考えていたのだ。

「・・・ねぇ、ハンク、手袋持って―うぉっ!!」

 大好きな人の前で派手に転んだ○○。目の前には道路。今日は本当に「痛い」ことばっかりだなと、○○は道路とお友達している状態にも関わらず、冷静につっこんでみる。

「・・・まったく、何してるんだ・・・」

 呆れたようなハンクの声が聞こえる。○○が顔を上げると、差し出されたハンクの手があった。

「ほら!」

 掴まれと言うハンクに、○○は照れながらも自分の手を伸ばす。

「―お前がさっき手を振っていたのも、ずっとポケットに手を突っ込んだままなのも、手袋を忘れたせいか」

 ハンクは、○○の手を握り、立たせようとすると更に続ける。

「始めっから言えばいいものを・・・ムリするから転ぶんだ。お前はドジだからな。ま、手袋を忘れる時点でドジだけどな」

 「くっくっ」と笑うハンクに、○○も自然と笑う。

「ハンクの手・・・」

 ○○は、握ったハンクの手を見つめた。

「ベタベタしてるね―だぁっ!!」

 ○○が立ち上がる寸前に、急に放された手。またしても、○○は派手に転んだ。

「―ずっとそこで転んでろ」

 スタスタと足早に歩くハンク。「ちょっと待って!」と走れば、正面を向いたまま歩くハンクが、近づく○○に再び手を伸ばした。

「今度は転ぶなよ」


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