なしじゃない!むしろあり!
「早いだろ・・・!」
「はい!?」
主語も述語もなしに“早いだろ”と言われても、何が何だかわからない。○○の柔らかな表情は一瞬にして消え去り、鼻の穴と口が不恰好に開いた表情に変わった。
「何が・・・“早い”んですか・・・?」
プロポーズが!?早いってこと・・・!?
「料理にありつけるスピードだ!!」
「はぁ・・・!?」
ピアーズは満席の店内を見渡した。窓の外では未だ並んでいる客が、待ち時間を気にして腕時計を見つめている。
「この辺じゃレストランはいつも混んで並んでね・・・」
更に真剣な顔のピアーズが○○を見つめた。
「俺はここの常連なんだ・・・!!!」
「はぁ・・・そうなんスか・・・」
プロポーズじゃないじゃん!―ってか、バイキングの常連ってどんだけ食い意地はってんだよ・・・。
確かに、レストランで長いこと待つのは厄介だが、別に、『たまらなく空腹で待てない』ということがある訳でもない。それを、常連ですぐに食事にありつけると自慢されても、何と返答していいのだろうか。
目の前の彼氏は、美味しそうに皿を空にしていく。
「ピアーズさん、よく食べますね」
新しい皿に追加されれいく料理は、ミニハンバーグやウインナー、フライドポテトやグラタンなど、高カロリーの物ばかり。
たまにの外食なら、高カロリーでもいいじゃないか!!しかし、今日のピアーズとの食事は、久しいものではなかった。一昨日のディナーも、先週の日曜日のランチも、こうして食事をした・・・。○○も食べるのは好きだ。しかし、体重が気になって、なるべく低カロリーの物を食べたり、量を減らしたり、エクササイズをしたりしていた。
ピアーズさん、BSAAの人たちともこうやって食べてるのかな・・・。
職場が違うため、普段の彼の食生活など知る由もない○○。
「ピアーズさん・・・お腹、大丈夫・・・なんですか?」
何度目かわからない料理の追加に、○○は心配の声をかける。
「あぁ!大丈夫だ!!」
ピアーズはアスパラのベーコン巻き焼きを「はんっ!」と口に入れたところだった。
「最近、やたら腹減るんだよな!」
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