なしじゃない!むしろあり

「ちょ、ちょっとぉ!ピアーズさぁんっ!!」

 付き合い始めて1年の○○とピアーズ。互いに慣れ親しみ、二人で出かける回数も増えてきていた。そんな彼と一緒にバイキングレストランに来ていたのだが、夕食時の行列にもかかわらずすんなりとテーブルに案内されたことに、○○は焦りの声を漏らした。自分たちの前には店に入れずに待っている人たちが沢山居るのだ。それを、後から来た自分たちが先に案内される・・・あまり気分のいいものではない。予約をしているのなら話は別だが。

「ピアーズさん、予約ってして―」

「ない!」

 してないのかよ!

 即答しながら店員に「ドリンクバー2つ!」と元気よく呼びかけるピアーズ。人差し指と中指を立て、「2」と示していた。

 バイキングレストランなので、特にメニューはない。各々が好きな料理を皿に盛るのが醍醐味である。○○もそれに倣い、皿を手に料理の並ぶテーブルへと向かった。

「えぇと・・・どれにしようかな〜・・・あっ!これ美味しそう!ん〜!あれも!!」

 どの料理を皿にとるか迷う○○。ちらりとピアーズを見れば、彼は既に料理をとり終えテーブルに着こうとしていた。

「ピアーズさん!バイキングって何とろうか迷いますね〜!」

 バイキングなのだから2回3回と好きなだけ料理をとりに行けばいい。そう思い、端から順に料理を盛った○○。「こんなにとっちゃいました」と嬉しげにピアーズに笑いかけた。

「○○」

「はい」

 ○○がアイスティーのストローを口に含んだ時、ピアーズの真剣な声がした。

 な、何っ!?その真剣な顔・・・。

 ピアーズの真剣さに動揺する○○。

 ま、まさか・・・プロポーズ!?とか・・・!?・・・でも待って!付き合ってまだ1年だし・・・!あぁ!でもでもでも!電撃結婚とかってあるし!?

「はいっ!!」

 ○○はアイスティーを静かにテーブルに置き、ゆっくりとピアーズに向き直る。柔らかな表情を作り、プロポーズされるのを前提とした幸せ満開の返事をした。


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